(社説)加計氏の会見 説明になっていない

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 世の中の疑問や批判にしっかり向き合おうという気持ちは、どうやら一切ないようだ。加計学園の加計孝太郎理事長の記者会見は、またしても何の中身もないまま終わった。

 加計問題の核心は、理事長と安倍首相の親密な関係により、学園が有利な取り計らいを受けたか否か、にある。

 疑惑を否定する根拠として首相は、国家戦略特区を使った学園の獣医学部新設計画を知ったのは、特区の事業者に決まった17年1月だったと国会で答弁した。しかし地元愛媛県の文書には、15年2月に首相と理事長が面会し、学部新設についてやり取りした旨の記載があった。これが正しければ、答弁の信用性が疑われることになる。

 会見で理事長は、面会の事実はなく、学園の事務局長が県の担当者と会った際に「勇み足」で作り話をし、それが文書に残ったとの釈明を繰り返した。

 にわかに信じがたい話だ。

 県文書には、首相と理事長の面会がなかったとしたら、つじつまの合わない記述がいくつもある。一方、理事長は、自身の行動を当時の記録に基づいて説明するわけでもなく、ただ口頭で面会を否定するだけだ。「処分中」を理由に当の事務局長を会見に同席させず、さらに驚いたことに、肝心の県文書をいまだに見ていないという。

 大学とは、データや事実に基づいて、考え、議論し、真理を探ることを教える場ではないのか。その経営トップが、事実をあいまいにして、説明にならない説明を重ねる。あるべき姿からかけ離れている。

 加計理事長は「これからコンプライアンスをきっちり守っていきたい」と述べた。「これまで」の責任を果たさないまま、「これから」を語っても、説得力に欠けること甚だしい。

 疑惑が持ちあがって1年5カ月。行政の公正公平が疑われ、信頼回復にほど遠い状態が続く。月内に召集される予定の臨時国会では、加計学園や県の関係者を招致し、今度こそ真相の解明に取り組む必要がある。首相も、この問題を引きずったままでは、まともな政権運営はできないと自覚すべきだ。

 加計理事長の会見について、中村時広知事は「もやもや感が拭えない」とコメントした。

 学園には県と今治市から計93億円もの補助金が支払われる。平気で「作り話」をするような相手にそれだけの公金を投ずることに、県民・市民は納得するか。この先、地域の一員として学園は活動していけるのか。関係者はよくよく考えるべきだ。

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