(社説)温暖化報告書 これは科学の警鐘だ

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 地球の気温は上昇するばかりで、このままでは異常気象自然災害で世界が危険にさらされる。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、そんな特別報告書をまとめた。

 IPCCには195カ国が加盟し、専門家が地球温暖化を分析・評価している。特別報告書は科学が鳴らす警鐘である。真剣に耳を傾けるべきだ。

 温暖化対策の国際ルール「パリ協定」は、産業革命以降の気温上昇を2度未満、できれば1・5度までに抑えることをめざしている。IPCCは今回、上昇幅が1・5度と2度の場合に何が起きるのかを比較した。

 浮かび上がってきたのは、わずか0・5度の違いで環境への影響に大差があることだ。

 1・5度の上昇でも熱波や干ばつ、洪水の被害が増え、海面の上昇や動植物の生息域の減少といった影響が出る。2度上がると、これらがいっそう深刻になり、水や食料の不足、健康の問題に苦しむ人々が大きく増えてしまう。社会や経済への深刻な打撃は避けられない。

 気温の上昇は1・5度までに抑えるべきだ。それが特別報告書のメッセージである。

 ただ、すでに気温は約1度も上がっており、早ければ2030年にも1・5度に達すると特別報告書は見ている。

 今年の夏、世界各地で猛暑や日照り、豪雨などの被害が頻発した。IPCCは「温暖化の影響はもう見え始めている」として、社会のあらゆる分野で大胆な変革を急ぐよう訴える。

 かぎを握るのは、12月にある国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)だ。

 削減目標の公平性や資金支援などについて意見の食い違いが残るなか、いかに実効性のある運用ルールを決めてパリ協定を動かせるか。特別報告書の警鐘を各国は重く受け止め、交渉を加速させなければならない。

 上昇幅を1・5度に抑えるには、温室効果ガスの排出を50年ごろに実質ゼロにする必要がある。しかし、現在の各国の削減目標を積み上げても、2度に抑えることさえ難しい。各国はより大胆な削減目標をたて、その実現へ努力すべきだ。

 化石燃料から再生可能エネルギーへの大転換によって二酸化炭素(CO2)の排出量を減らす。植林によりCO2を吸収する。CO2を回収して貯留する技術を実用化する。やるべきことはたくさんある。

 IPCCは「これから数年で何をなすかが歴史上で最も重要だ」と強調した。私たちに残された時間は、あまりない。

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