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 本当のところどれだけの経費がかかるのか。東京五輪・パラリンピックに向けられる人々の視線は厳しさを増すばかりだ。

 会計検査院が「中央省庁の予算で286の関連事業がすでに実施され、この5年間で8011億円を支出した」とする報告書を、国会に提出した。

 大会組織委員会、東京都、国の昨年の合意では「経費総額は1兆3500億円。組織委と都が各6千億円を、国は残りの1500億円を負担する」とされており、検査院の指摘は驚きをもって受け止められた。

 もっとも事情は複雑だ。

 8011億円の中には、選手村へのアクセス道路整備のため国が都に交付した約300億円もあれば、気象予測の精度を高める費用約370億円も含まれる。暑さ対策の一環として、国土交通省が大会関連施策に位置づけているという。

 どちらもおかしな話である。

 道路整備費は、あらかじめ国の負担額に計上するか、少なくとも別途必要な経費として公表しておくのが誠実な対応ではないか。一方で、気象衛星の運用費も五輪関連だと言われたら、多くの人は面食らうだろう。

 五輪への理解を広げるため、見かけ上の経費を圧縮するなかでひねり出された「1500億円」と、逆に、五輪に乗じて少しでも多くの予算を獲得したい省庁が、競い合って積み上げた「8011億円」と。

 二つの数字の向こうにそれぞれの思惑や打算が透ける。いずれにせよ、実態を覆い隠し、市民から見えなくさせてしまう点で、両者は一致する。

 検査院は内閣官房の大会推進本部事務局に対し、五輪開催とはかかわりなく本来行われるはずの行政業務を含めて、大会との関連性を整理し、その内容や経費の規模を公開するよう求めた。至極当然の注文だ。

 五輪経費か否かの線引きにはたしかに難しい面がある。国際オリンピック委も明確な基準を示していない。判断に迷うケースは、事業の中身や意義を丁寧に説明して、人々に考える材料を提供するようにすべきだ。

 五輪のために何が行われ、費用はいくらで、期待された成果はあったのか。そうした検証と総括のためには、徹底した情報の公開が欠かせない。

 夏季・冬季を問わず、五輪に名乗りをあげながら撤退する都市が近年目立つ。背景には開催経費に対する不安がある。

 引き続き抑制に努めるのはもちろん、透明化を推進し、説明責任を果たすことで、東京大会を今後の良き先例にしたい。

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