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 米国の保護貿易主義がはらむリスクが、現実のものになりつつある。世界経済の持続的発展を保つためには、各国が協調してこの流れを食い止めなければならない。

 金融市場では今週、米国を起点にした大幅な株安が世界を一巡した。底流には米国の金利上昇があり、一定の調整が起きること自体は自然な動きだ。最近の米国市場は株高に過熱感があり、その反動が急落につながった面もあるだろう。

 ただ、今回の動きを一過性の「市場のあや」として見過ごすわけにはいかない。米国の株安が直ちに伝播(でんぱ)した背景には、米中間を中心とした貿易摩擦が世界経済の足を引っ張るとの懸念があるからだ。

 国際通貨基金(IMF)が今月公表した経済見通しは、今年と来年の世界経済の成長率見込みを、それぞれ0・2%幅引き下げた。4月時点の見通しは楽観的過ぎたとしている。

 併せて、貿易摩擦の影響も試算した。米国が検討中の高関税をすべて発動し、それへの対抗措置がとられた場合、世界経済の成長率は長期的に0・4%幅下がるとのシナリオを描いている。日本経済も短期的には相当の落ち込みが見込まれる。

 世界経済にはこのほか、英国の欧州連合離脱やイタリアの財政不安といった懸念材料もある。米国の金利上昇が新興国からの資金流出を促す影響も注視する必要がある。無益な貿易摩擦がこれ以上拡大することを座視するわけにはいかない。

 インドネシア・バリで開かれた主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議では、世界経済のリスクへの対応が話し合われた。麻生財務相は「保護主義的な措置による内向きな政策はどの国の利益にもならない」と発言したという。

 トランプ米大統領は「米国第一」を掲げて保護貿易に突き進んでいるが、IMFの試算でも、貿易摩擦の結果、長期的な成長率の押し下げ幅は、日欧中より米国のほうが大きい。世界経済を巻き添えにするだけでなく、自国の利益にもならない愚策であることを、各国は繰り返し米国に説く必要がある。

 一方で、日本国内での経済の好循環を早急に実現することが、世界経済の波乱によるショックを和らげるためにも重要だ。企業が空前の利益を上げているのに、働き手への分配が伸び悩んでいることが阻害要因となり、消費拡大に結びついていない。賃金と消費の伸びを確実にしていく施策が、これまで以上に求められている。

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