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 安倍首相がこれからの3年で断行するとした社会保障改革の議論が始まった。

 将来の社会保障の姿をどう描き、必要な財源をどう確保するのか。医療、介護、年金、子育てなどの各分野を広く見渡し、「給付」と「負担」を一体で考える。そんな骨太な議論が期待される。

 だが、首相が「全ての世代が安心できる社会保障へ」と意気込むわりに、今の議論の進め方はばらばらで、テーマも限定的な印象だ。

 議論が始まった未来投資会議と経済財政諮問会議はともに、首相が議長を務める。未来投資会議は主に成長戦略を議論する場だ。社会保障改革もその一環と位置づけ、高齢者の雇用拡大や新卒一括採用といった雇用慣行の見直しを中心に検討するという。

 経済財政諮問会議はすでに、給付と負担のあり方を含む重点政策の取りまとめを2年後に先送りすると決めている。当面は健康づくりや予防の推進などを中心に議論する予定だ。

 いずれも必要な取り組みではある。意欲のある高齢者が働ける環境を整え、制度の担い手を増やすことは大事だ。

 だが、国民が最も知りたいのは、少子高齢化が進むなかで制度を維持するために、給付をどこまで抑えねばならないのか、負担はどれだけ増えるのかだ。医療や介護の保険でカバーする範囲の見直し、患者や利用者の負担引き上げが、政府の改革工程表の検討メニューに挙げられながら、どこまで踏み込むかがわからないことが、将来に対する不安をよんでいる。

 一方で、目標としながら一向に実現しない「待機児童ゼロ」のように、今の施策が十分なのかという問題もある。今後増えると予想される一人暮らしの高齢者への対応も考えねばならない。そうした社会保障の全体像を考えることこそ、改革の「本丸」のはずだ。

 それには、多岐にわたる論点を包括的に議論する、新たな検討の場が必要ではないか。

 65歳以上の人口がほぼピークを迎える2040年度には、社会保障給付費の対GDP(国内総生産)比は今の21・5%から約24%に上昇する。政府は5月に、そんな長期推計を初めて公表した。消費税を来年10%に上げれば安心とは言えない現状を示しながら、そのことへの対応を議論する場がいまだにないのは、怠慢というほかない。

 継ぎはぎの改革で「安心」は得られない。困難な課題に向き合ってこその社会保障改革だ。

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