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 ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)さんが、賞金をもとに若手研究者を支援する基金を設ける考えを明らかにした。

 2年前に同賞を受けた大隅良典さんも、基礎生物学の研究を支援する財団をつくった。「すぐには役に立つと思えない研究に光を当てたい」と話す。

 共通するのは、科学の原理の探究を目的とする基礎研究の現状、そして研究者を取りまく環境に対する深い憂慮だ。

 近年、自然科学分野で日本からの受賞が相次ぐが、そのほとんどは、1960年代から90年代にかけての業績が評価されたものだ。ひるがえって「今」に目を転じると、様々な指標が警告を発している。

 海外から注目される論文は数、シェアともに低下し、国立大学では若手を中心に任期付きポストの割合が増えている。学内外の用事に追われて研究に割ける時間が減り、独創的なテーマにじっくり取り組める状況にないとの声がもっぱらだ。

 人件費や自由な研究費に使える国立大学への運営費交付金は、この15年間で10%以上減った。基礎研究を支えてきた科学研究費助成事業(科研費)の総額も年2300億円弱でほとんど変わらず、応募しても採択されるのは2割台にとどまる。

 こうした状況を見て、学生が研究者の道を避ける「負の連鎖」が起き始めている。

 政府も手をこまぬいているわけではない。6月に閣議決定した統合イノベーション戦略は、「若手の活躍機会創出」や「研究生産性の向上」を明記し、数値目標も掲げた。

 とはいえ対症療法の域を出ていない。たとえば、同戦略には若手に科研費を重点的に配分することが盛りこまれた。悪い話ではないが、恩恵に浴するのは一部にとどまる。不安定な雇用形態をはじめとする構造問題にメスを入れない限り、全体の底上げを望むのは難しい。

 政府はこの十数年、産業力の向上をうたい、研究者を競わせて配分する資金を増やしたり、政府自身が課題を設定し、そこに巨額の金を投じたりする「選択と集中」を進めてきた。結果として、現場の疲弊や基礎研究の衰退を招いてはいないか。

 がん治療に新たな選択肢をもたらした本庶さんの研究も、もともとはそれを意図したものではなかった。どんな研究が次の時代を切り開くのか、予測するのは難しい。その認識をもち、目先の利益の追求にばかり走らず、幅広い分野に地道に種をまき続ける姿勢こそが大切だ。

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