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 インターネット上で、漫画やアニメを違法に配信する「海賊版サイト」対策を話し合ってきた政府の有識者検討会議が、意見を取りまとめられないまま、無期限延期になった。

 サイトを閲覧する者に対し、業者(プロバイダー)が接続を遮断できる法制度を設けるか否かが最大の論点だった。だが4カ月にわたって議論しても、見解の溝は埋まらなかった。

 はっきりしたのは、現時点で社会的合意を得るのは不可能だということだ。政府は、来年の通常国会をめざしていた法制化作業を白紙に戻すべきだ。

 プロバイダーが接続を遮断するには、問題のサイトにとどまらず、利用者のアクセス先をすべて確認する必要がある。憲法が保障する「通信の秘密」を侵す恐れが強いというのが、反対派が最も懸念した点だ。

 日本では、重大な人権侵害行為である児童ポルノに限り、11年から遮断を認めている。他分野には広げないという確認がされていたが、政府は今春、唐突に海賊版にも同様の措置をとることができると言い出した。

 「クールジャパン」を支える漫画・アニメ産業を守ろうという意図は理解できる。だが、憲法も、長年の議論の積み重ねも軽視する姿勢に、プロバイダー業界や法曹界から異論が出たのは当然だ。現政権の体質や手法に対する危機感が噴きだした、と言うこともできよう。

 議論が進むなかで、政府の主張のいい加減さも目についた。「数千億円」とされた被害額の算定方法や、外国では広く遮断が行われているとの言い分にも疑問が寄せられた。

 さらに「海賊版サイトの運営者を特定するのは難しいので、遮断するしかない」と唱えていたのに、米国内の裁判手続きを使って、運営者と思われる人物の氏名や住所などを実際に入手した例が報告された。

 調査を尽くさぬまま、安易に「劇薬」に手を出そうとしたと言わざるを得ない。議論の前提がこうも揺らいでは、意見集約できないのは当たり前だ。

 もちろん、海賊版に手をこまぬいたままで良いはずはない。

 会議では、海賊版サイトの収入源である広告を出さないよう企業などに呼びかけ、社会全体で監視を強める▽正規版を流通させる仕組みを整備する――などが提案された。ネット利用者への周知・啓発活動も大切だ。

 これらの動きをサポートするとともに、他国とも連携して違法サイトの運営者の摘発に努める。そうした対策にこそ、政府は力を注ぐべきである。

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