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 「次世代への約束 もっと寛容な社会に」をテーマに、9月24~26日に東京都内で開かれた国際シンポジウム「朝日地球会議2018」(朝日新聞社主催)。最終日は、持続可能な社会を実現するために経済活動はどうあるべきか、などが議論されました。討論や講演の様子を2日間にわたって紹介します。

 ■SDGs意識定着、五輪レガシーに ポスト2020年に目指す持続可能な社会

 2020年東京五輪・パラリンピックは、国連の「持続可能な開発目標(SDGs〈エスディージーズ〉)」を取り込んで、計画が作られている。電力を100%再生可能エネルギーにする構想のほか、選手村や競技場で使う木材や食堂の水産物などの選択については、持続可能性に配慮するための基準が設けられた。「SDGs五輪」をきっかけに、20年以降に持続可能な社会をどう実現するか議論した。

 三菱総合研究所理事長の小宮山宏さんは「人々の心や制度、ビジネスで持続可能な社会のレガシー(遺産)を残さないといけない。例えば、都市鉱山の再生金属でメダルを作るプロジェクトは、市民参加の意識とビジネスモデルが広がることが大事」。プラスチックごみについては、「再生できるものは100%回収し、それ以外は分解できる素材を使うということができれば非常にいい」と話した。

 海洋管理協議会(MSC)日本事務所の石井幸造さんは、英国ではロンドン五輪をきっかけに、持続可能性に配慮したMSC認証水産物がホテルやレストランで広く使われるようになったことを紹介。日本でも水産物の持続可能性に関心が高まってきたとし、「東京五輪の機会を逃したら次はない。企業側から消費者に対し、理解を深めてもらうための働きかけが必要だ」と語った。

 また、宮城県南三陸町の林業会社「佐久」専務取締役の佐藤太一さんは「東日本大震災からの復興の街づくりで、持続可能な林業を目指している」。再建した町庁舎は、持続可能な木材と認める森林管理協議会(FSC)認証の町内の木材を使って建てられた。「町庁舎を建てる過程で、製材所、建設会社、商社にFSC認証を知ってもらえた。今後につなげるために地域間の連携も重要」と話した。

 ■ゴールではなく、大きなステップに

 東京五輪・パラリンピックでは、運営方法や使われるモノに関して、持続可能性が求められる。実際にビジネスはその流れに動き始めている。

 木材や紙、パーム油の生産は生産地の環境破壊や地域住民に対する人権侵害が長らく指摘されてきたし、水産資源の乱獲も深刻だ。だが、改善は遅々としていた。資源の再生利用や再生可能エネルギーの導入も含め、SDGs五輪は、社会が持続可能性に配慮する方向に大きく転換するチャンスだ。

 2020年はゴールではない。私たちが目指す持続可能な社会に向けた大きなステップととらえたい。ビジネスも消費者もできることを進めていく。討論でそう確認できたと思う。(コーディネーター・神田明美)

 ■「置き去りにしない」都市の力 SDGsで街の未来をつくる

 街の課題解決に、SDGsを採り入れている3市のトップが、街づくりの新たな可能性について議論した。「誰も置き去りにしない」というSDGsの理念と市政の方向性が合致するとして、取り組みを強化していくことになった。

 茨城県つくば市長の五十嵐立青(たつお)さんは、子どもの貧困への対応で、親への支援と市民参加とを組み合わせる考えを紹介。食材を地産地消するレストランを認定する制度を始めて雇用をつくり、売り上げの一部を新たにつくる学習支援などのための基金に回していくという。

 浜松市長の鈴木康友さんは、日系ブラジル人を受け入れ、独自の教育支援もしてきた多文化共生政策を紹介。政令指定市の中で犯罪発生率が最も低いレベルにあることを挙げ、「共生社会が築かれていれば治安が乱れることはなく、多様性を都市の力にできる」と述べた。

 堺市長の竹山修身(おさみ)さんは、高齢化が進む「泉北ニュータウン」の活性化を、SDGsに沿った例として挙げた。高齢者の買い物や外出を支援、空き家をリフォームして子育て世代を増やしている。大学医学部の移設を軸に健康や医療関係の事業所を誘致、水素ステーションも整備するという。

 共通するのは、街の強みをいかすこと。堺市は中世の頃から続く「自由と自治の精神」による市民参加の推進。浜松市は国際認証を受けた材木の供給や、太陽光発電によるエネルギー自給。つくば市は研究学園都市としての科学技術の活用だ。

 今後の課題について、鈴木さんは国と地方の財政の健全化問題、竹山さんは防災の重要性を語った。五十嵐さんは、SDGsを「これからの、やさしさのものさし」と言い換えながら、政策を進めていく考えを披露した。

 ■施策の統合に理念使える

 SDGsの成否は、都市での取り組みがカギを握るとされている。日本では内閣府が29の自治体を「SDGs未来都市」に認定。事例の積み上げと共有が期待されるなか、未来都市の3市のトップに壇上でその「実践」をお願いした。

 SDGsに照らし合わせることで、課題と課題とを合わせて統合的に取り組みやすくなる。17分野の目標と169のターゲットから、施策を組み直す有効性は高く、自治体がSDGsを使わない手はない。

 何よりも討論を通じて実感したのは、言葉と視点を引き出す対話の力だ。地域やコミュニティーで対話を始める。それが将来を見据えた街づくりにつながるはずだ。来場者それぞれが、持ち帰るものがあったと思う。(コーディネーター・北郷美由紀)

 ■特別講演 各地で植樹活動、減災につながる 山本百合子・イオン環境財団事務局長、日本学術会議連携会員

 環境活動では、民間セクターがその専門性をいかしてできることがさまざまあります。イオン環境財団では市民団体への助成や大学との連携事業のほか、1991年から世界各地で植樹活動を進めています。イオンの店舗を通じてお客様を募集し、地域の方と一緒に植樹を行うのが特徴です。

 さらに昨年から、日本ユネスコエコパークネットワークと連携協定を結び、環境学習や啓発イベントなどに取り組んでいます。ユネスコエコパークは「生物圏保存地域」と呼ばれ、日本でも9地域が登録されています。生態系保護だけでなく、自然と人間社会の共生に重点を置いています。

 従来の環境事業は保護が中心でしたが、今後は人の営みと自然が共存共栄することが大切です。北海道胆振東部地震でも、私たちが厚真町で植樹をした地区は山崩れをまぬがれていました。人の手が入ることは減災にもつながります。

 今後も産官学が手を取り合い、一つしかない地球を次世代に残していきたいと考えています。

 (21面に続く)

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