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 (19面から続く)

 ■水素が動かす復興と五輪

 パネル討論「水素が動かす復興と五輪」では、二酸化炭素(CO2)を出さない「究極のクリーンエネルギー」といわれる水素の可能性を探った。

 2020年東京五輪・パラリンピックは、世界各国の選手たちが暮らす選手村に水素による電気と熱を供給する。冒頭には、東京電力福島第一原発事故からの復興をめざす福島県で、大会で使う水素をつくる計画が紹介された。

 続いて、3人のパネリストがツイッターなどで事前に寄せられた質問を選んだ。

 「水素を主要エネルギーとして生産する国は?」との問いに対し、東大客員准教授の松本真由美さんは、水分が多くて利用されていない褐炭から水素をつくる豪州の例を挙げた。水素の値段はまだ高く、普及の足かせになっている。「大量に輸入されるようになれば、日本の水素の値段は下がる」と期待した。

 トヨタ自動車FC技術・開発部主査の小島康一さんは「電気自動車(EV)と比べた燃料電池車(FCV)の優位性は?」という質問を選んだ。「動力源が蓄電か発電かの違いで、両車とも同じEV。ともに必要な技術だが、貯蔵できるメリットのある水素を使う動きがこれから出てくる」と語った。

 いま主流の天然ガスなどの化石燃料から水素をつくる方法はCO2が発生する。「CO2を出さないためにはどうしたら?」との疑問に、産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所長の中岩勝さんが応じた。「風力や太陽光など再生可能エネルギーによる電気で水を分解し、水素をとり出すことが非常に重要になる」

 福島県浪江町では、太陽光を使う世界最大級の水素製造工場の建設が進む。2年後、日本の水素技術を復興する福島から世界へ。そして、未来へ。パネリストたちの思いは一致した。

 ■インフラ・イメージ、普及の壁

 大型の台風や猛暑、豪雨と日本列島は異常気象が続く。エネルギーの自給率の低さや、地球温暖化対策の「パリ協定」で課せられた高い目標も考えると、日本ほど水素社会の恩恵を受けられる国はないだろう。

 水素は、発電のため酸素と結びついてもCO2は出ない。水を電気分解すればつくれ、ほぼ無尽蔵にある。送電線で結べない遠い国にも運べる。多くの利点があっても普及は遅れる。

 課題もまた、キリがないからだ。火力発電よりコストが高い。まだ高価なFCVに供給するインフラも少ない。「危ない」イメージもつきまとう。

 ただ原発事故や大停電で実感したのは、ひとつの電源に頼る社会は意外にもろいということ。未来は、多様な選択肢を追い求める向こうにある。(コーディネーター・堀篭俊材)

 ■洋上なら巨大化・発電コスト減も 風力発電は主役になれるか――IoTが鍵を握る

 今夏の高温や記録的な大雨、台風などの気象災害が、地球温暖化に起因することは多くの専門家が認めている。テレビ朝日系の朝の情報番組「グッド!モーニング」でお天気キャスターを務める気象予報士、太田景子さんは2018年を「気象の極端化元年」と位置づけた。

 地球温暖化への歯止めとして再生可能エネルギーの導入が叫ばれている。中でも風力発電が世界では主役になりつつある。欧州連合(EU)では発電に占める風力の割合が約12%に、米国テキサス州では約20%になっている。一方で、日本では風力の発電量は世界19位で全発電量の約0・6%にすぎない。

 日本が出遅れている理由について、京都大学大学院特任教授でエネルギー戦略研究所取締役研究所長の山家公雄さんは「いろいろあるが、環境問題への取り組みに対する国の本気度が違う」と指摘。また、大手ベアリングメーカーNTN常務執行役員、江上正樹さんは「きちんとした政府の目標がないと、企業体はなかなか踏み出せない」という。

 ただ最近、日本政府の姿勢が変わってきたともいう。海に風車を設置する洋上風力についてエネルギー基本計画に期待を盛り込んだ。洋上に立地しやすくする法的整備にも取り組んでおり、次の国会で法案の成立を目指している。そうなると、日本でも洋上風力の本格的な普及の時代が来るという。

 洋上風力は風車の巨大化を促し、発電コストの低減につながる。ただ、巨大な洋上風力が増えるに従って、設備の維持や修理の効率化も大事になる。NTNは風力発電機の異常をいち早く検知して計画的に補修できるシステムを開発。天気予報の精度の向上も効率的な運用に役立つという。

 ■再生エネの時代、本気で信じて

 日本で風力発電があまり盛り上がらないのは、立地の制約だと思っていた。ヨーロッパのようにいい風が吹くところや遠浅の海が少ないとか、アメリカや中央アジアのように広大な無人の地がないとか……。

 でも、専門家は「本気度が足りない」ことを真っ先に挙げる。本気で設置しようと思えば、陸上でも洋上でも適地はいくらでもあるのだという。

 では、なぜ本気度が足りないのか。それは再生可能エネルギーが電力の主役になる時代が来ることを、為政者たちが本気で信じていないからではないか。

 日本は風力発電で出遅れてしまった。しかし、いずれ主役の時代が来ることを信じれば、遅れを取り戻すことはできるはずだ。(コーディネーター・一色清)

 ■特別講演 環境悪化、急速に進む危機感 石村和彦・AGC取締役兼会長/旭硝子財団理事長

 地球環境は今、どのぐらい悪化しているのでしょうか。世界各国の政府や有識者にアンケートして、人類存続への危機感を時刻で表す「環境危機時計」を1992年から毎年発表しています。今年は過去最悪の9時47分。昨年から一気に14分進みました。昨年まで7年かけて進んだ分が、たった1年で進んだのです。

 世界の有識者らは、危機意識を非常に強めています。特に北米と欧州でです。これは、米トランプ政権が温暖化防止の枠組みであるパリ協定から離脱した影響があるとみられます。

 社会が大きな環境問題に直面しつつも持続するには、高い強靱(きょうじん)性が必要だ――。そう提唱したのは豪州のブライアン・ウォーカー教授です。スウェーデンのマリン・ファルケンマーク教授は、水問題から問題解決の考え方を示しました。旭硝子財団は今年、環境への貢献をたたえる「ブループラネット賞」にこの2人を選びました。こうした顕彰を通じ、今後も心の豊かさを享受できる社会の創造に貢献していきます。

 (20面に続く)

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