(社説)プラごみ戦略 「大国」に見合う対策を
プラスチックごみを、どう減らしていくか。その鍵を握るプラスチック資源循環戦略の素案を環境省がまとめた。
2030年までにレジ袋やストローといった使い捨てプラスチックの排出量を25%削減し、プラスチック製容器包装の6割をリサイクルや再利用する。こうした数値目標を政府が掲げるのは初めてだ。絵に描いた餅に終わらせてはならない。
海にプラスチックごみが流れ込むと、波や紫外線で砕けて5ミリ以下のマイクロプラスチックになる。これが有害物質を吸着して魚介類に取り込まれ、食物連鎖で人間を含む多くの動物に悪影響を及ぼす恐れがある。
地球規模の汚染を防ぐため、脱プラスチックの流れが強まっている。欧州委員会がストローやカップなどの規制案を出したほか、多くの国々が独自の対策に乗り出している。民間でも、世界的な飲食店チェーンがプラスチック製ストローを使わない方針を相次いで打ち出した。
日本もこれまで、使用済みプラスチックの分別収集や有効利用などで、プラスチックの海洋流出の抑制に努めてきた。
とはいえ、1人当たりの使い捨てプラスチックの使用量が米国に次いで世界で2番目に多い「プラスチック大国」である。率先して脱プラスチックに取り組む責任がある。
その試金石の一つが、レジ袋をいかに減らせるかだ。
日本人は1人あたり年間300枚とも400枚ともいわれるほど多くのレジ袋を使う。容器包装リサイクル法の下、有料化やマイバッグ配布などが小売業者に求められているが、あくまで自主的な取り組みだ。今回、有料化の義務づけを盛り込んだことは評価できる。
ただ、その効果には限界がある。すでに有料化が広がりつつあるスーパーでも、レジ袋を辞退する人は約半数で頭打ちだ。レジ袋を禁止している海外の例を参考に、より効果的な規制を検討する必要があろう。
循環戦略案には、植物由来のバイオマスプラスチックなど再生可能な素材に切り替えていく方針や目標も明記された。利便性やコスト面で代替が難しいこともあるだろう。しかし技術力で壁を乗り越えれば、新たなビジネスが生まれるはずだ。
私たち一人ひとりの覚悟も問われている。プラスチックに過度に依存するライフスタイルを見直さない限り、問題の根本的な解決にはつながらない。
「大国」の取り組みを、世界が見つめている。そのことを忘れてはならない。
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