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 さきの大戦と中国の革命を経て、日中両国が国交を正常化したのは1972年だった。両国間の恒久的な平和友好を明記した条約が結ばれたのは、それから6年後の78年である。

 日本の中国侵略という歴史も背景に、両国は覇権主義に反対し、すべての紛争を平和的に解決していくと約束した。

 あれから40年。中国は飛躍的な経済成長で日本を追い抜き、強大な国力を得た。その台頭は両国関係にとどまらず、国際情勢を大きく変容させている。

 日本は、この隣国とどう付き合っていくべきなのか。

 ■隣り合う異質の国情

 25日から安倍首相が訪中する。7年ぶりの日本首相の公式訪問だ。関係の改善を進めるとともに、今後の日本外交全体のあり方を考える契機としたい。

 「日本と中国とは大みそかと元旦のような関係ではないか」

 72年の正常化当時の外相だった大平正芳・元首相は、そう語っていたそうだ。

 たった1日の違いだが、大みそかと正月では、人々の気持ちも街の景色もガラリと変わる。日中の関係もこれと似て、隣国ながら、大きな相違点が多々あると言いたかったのだろう。

 確かに日本は近年、中国の異質さを如実に経験してきた。

 尖閣問題などの二国間のあつれきだけではない。中国内での深刻な人権問題。さらには南シナ海問題のような、国際秩序を自らに都合よく変えようとする強引な振る舞いである。

 そうした強権の発動を座視することはできない。中国がいかに拒もうとも、民主主義、表現の自由、法の支配といった戦後日本と世界を築いた理念を曲げることなく、主張し続けねばならない。違いを乗り越える知恵と努力が求められている。

 ■重層的な関係を築く

 40年前、日本がはるかに大きかった経済規模は逆転し、今や中国が日本の2倍半になった。中国がさらに米国にも迫るなか、米中は新たな冷戦とも危惧される摩擦を生んでいる。

 先月の国連総会でグテーレス事務総長は、新旧の大国が衝突を重ねた世界史の教訓を学ぶよう提言した。日本にとっても、米中対立の行方は重大な意味を持ち続ける。

 中国がいま、対日接近に動いているのも対米摩擦の副産物だという側面は否めない。日本の隣国との関係に米国の動きが大きく影響する現実は、今後も変わらないだろう。

 自由主義を共有する日米は今後も協調していくべきであり、日本が米国との絆を重んじるのは当然である。ただ、その米国がトランプ政権のように自国第一主義に走れば、もはや対米追従だけでは乗り切れない。

 国際秩序を守るために日本が協働する仲間を重層的に考えるときだ。地球温暖化の防止や自由貿易の促進のためには欧州諸国やカナダ、豪州などとの連携が重みを持つ。重要なのは日本が主体的に外交を組み立てていく覚悟を持つことだ。

 いまの中国との協働は慎重さを要する分野もあるが、互恵の可能性を広げる余地は広大だ。中国との関係を是々非々で深める道を探らねばならない。

 日中ともグローバル化の果実を最も享受してきた国だ。まずは自由貿易体制の維持に向けて連携を強める。同時に、中国をより開かれた市場経済へ導く努力に踏み込むことが必要だ。

 中国が主導する「一帯一路」構想については、アジアと世界経済に資する潜在力がある。懸念される中国の覇権の具としてではなく、世界の発展に役立つ公正なインフラ開発となるよう、日本が関わるべきだ。

 ■交流を支える政治を

 日中関係を支えるのは、両国政府だけではなく、一人ひとりの国民の意識である。

 最近の世論調査を見ると、中国人の対日感情は好転しているが、日本人の対中感情の改善は鈍い。一方で、相手国を「軍事的な脅威」とする見方は双方で増えている。

 領土問題をはじめ、世論は小さな火種でも感情論に走りがちだ。どちらかの国の人々が留飲を下げれば、一方の国で強い反発が生まれる。繰り返されてきた「反日」や「嫌中」の連鎖を断ち切れないものか。

 いまや中国からの来日は年間730万人、日本人の訪中は250万人。この交流の拡大を、好き嫌いを超えた理性的な関係づくりに役立てたい。政治の役割は、市民同士の関係に水を差すのではなく、養い育てることにある。

 平和友好条約は、72年の共同声明などとともに両国関係の基礎とされる「四つの政治文書」の一つだ。来年には習近平(シーチンピン)国家主席の訪日も視野に入る。ここ数年の諍(いさか)いを繰り返さないためならば、第5の政治文書の作成も、検討されていいだろう。

 批判すべきところは批判し合い、協調できるところは協調を強める。合理性に立った、新たな日中関係をめざしたい。

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