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 英国はこの混迷のまま、欧州の一つ屋根から離れるのか。世界の経済をどう揺るがすかも知れない無秩序な離脱は、何としても避けねばならない。

 英国と欧州連合(EU)との交渉が難航している。英国が離脱する来年3月末まで5カ月。今月のEU首脳会議でも合意はまとまらず、実質的な交渉期限は年末まで先送りとなった。

 原因は主に英国側にある。メイ首相は、通商などで欧州共通の枠組みにとどまる穏健路線をとる。しかし与党・保守党内の強硬派は反対し、党首選の要求も示唆して揺さぶっている。

 英政府とEUの合意ができたとしても、最終合意には英議会の承認が要る。保守党政権は昨年、盤石な議会勢力で強硬離脱を狙おうと前倒しで総選挙に踏み切ったが、逆に過半数を割り込んで少数政権になった。

 勢いづく最大野党・労働党は今の離脱方針案に反対する方針だ。英政府にとっては、EUとの交渉よりも議会の承認の方が難しいとの見方もある。

 2年前の国民投票では、52対48の僅差(きんさ)で「離脱」が勝った。当時、強硬離脱派の政治家らは「主権を取り戻せ」と訴え、多くの問題が解決するかのようなキャンペーンを繰り広げた。

 いわく、EUへの出費がなくなれば、毎週約500億円を医療サービスに充てられる。低賃金で職を奪うEUからの移民が消える。英国人の暮らしは格段に良くなる――。これらの「公約」はその後、発言者本人らが間違いと認めている。

 人、モノ、資本、サービスの自由移動は、EUにとっての大原則だ。単一市場の恩恵は受けつつ、移民は独自に制限する、という英国の「いいとこ取り」を、EUは認めない。

 最近の英国の世論調査では、EU残留の支持率が離脱をわずかに上回った。国民投票の再実施を求める市民らがロンドン中心部で開いたデモには、15年前の反イラク戦争以来最多の約70万人が集まったという。

 離脱がもたらす、さまざまな現実と、社会の分断を突きつけられ、英国自身が困惑しているようにみえる。

 英国には、自国が生んだ経済学者ケインズの問いかけとして知られてきた言葉がある。「事実が変わった場合、わたしは意見を変える。あなたは、どうしますか?」

 国民投票の結果が重い民意であるのは確かだ。だが、当時語られた離脱後の未来の「事実」が実は正確でなかったのならば、どうか。いま一度、考え直す余地はあるのではないか。

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