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 21世紀はアジアの時代と言われる。世界の成長を牽引(けんいん)する巨大な活力を持つアジアの安定こそが、世界の平和の鍵を握る。その地域を代表する2大国である日本と中国の責任は重い。

 安倍首相が訪中し、習近平(シーチンピン)国家主席と会談した。日本の首相が単独訪中するのは7年ぶり。両国関係について安倍氏は「競争から協調へ」と期待を示し、習氏も「正常な軌道」に戻りつつあることを確認した。

 2012年の尖閣国有化などを経て、「最悪」と言われるほど悪化した関係がここまで改善したことを評価したい。

 交わされた政府間の署名文書は12本。第三国での投資協力をめぐる企業などの覚書は52本。踏みこんだ内容は乏しいが、双方が友好の演出で足並みをそろえたことに意義があった。

 日本は40年近く続けた中国への途上国援助をやめる一方、日中で他の国々のインフラ整備などを進める方向を打ち出した。アジア発展の基盤を整えるために、世界第2と第3の経済力を持つ両国が協力するのは、時代の要請に応える前進だ。

 中国には豊かな資金と物資を供給する力があり、日本には公正な国際支援の実績がある。途上国を舞台に影響力を競うより、新たな経済発展の拡大へ協調する方がずっと理にかなう。

 この首脳会談は、真の互恵の関係づくりへ向けて遅まきながら出発点に立ったに過ぎない。歴史や台湾問題は今回、封印された。尖閣や安全保障問題に実質的な進展はほとんどない。

 そもそも日中接近をもたらした主因は、米中間の対立だ。日中固有の問題だけでなく、外的な環境の変化次第で、日中関係が容易に浮沈する現実は変わっていない。

 この脆弱(ぜいじゃく)さを取り除くためには、中国が海洋進出などの強引な振るまいを改めるとともに、国民の対日感情を内政に利用しない自制が必要だろう。

 日本の側は、単なる対米追従ではない自立した外交の強化が求められる。貿易問題では、トランプ政権に保護主義の見直しを促しつつ、中国に市場の公正な運用を求める。そんなバランス感覚のある外交で国際秩序の安定に寄与していくべきだ。

 日中間には、自由と民主主義をめぐる根源的な違いが横たわっている。日本は人権問題について毅然(きぜん)と対応すべきであり、主張すべきは主張する是々非々の立場を貫かねばなるまい。

 来年の訪日について、習氏は「真剣に検討する」と語った。その実現に向けた具体的な道筋づくりを確実に進めたい。

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