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 パチンコや競輪、競馬などによる「ギャンブル依存症」に一度は陥った疑いのある人が、日本には320万人いるとされる。多重債務や自殺、虐待、犯罪の原因になっているという問題意識のもと、国や自治体の責務などを定めた対策基本法が、先月施行された。

 政府は来年4月までに基本計画をつくることを決め、近く専門家らから聴き取りを始める。目配りのきいた内容にするには、医師、研究者はもちろん、患者の家族や支援者からも幅広く話を聴く必要がある。

 ギャンブル依存症は意志が弱い人の問題と思われがちだが、脳内でドーパミンが過剰に分泌される精神疾患のひとつだ。「否認の病気」とも言われ、本人はなかなか病気と認識しない。その結果、家族が暴力や借金の尻ぬぐいで疲弊してしまうケースが多い。

 これまで患者や周囲へのケアは、主に被害家族らでつくる自助グループや、民間の相談機関が担ってきた。今後はこうした団体への財政支援も充実させ、官民一体となって予防と治療の仕組みをととのえたい。

 基本計画に盛り込むべき施策は多い。居住地にかかわらず適切な医療を受けられるよう、全国の保健所、精神保健福祉センターでの相談体制を強化する。医療機関だけでなく、法律面でのサポートにあたる法テラスなどとの連携も求められる。さらに、患者の社会復帰や就職の支援、学校教育や啓発活動の充実なども必要だ。

 大切なのは、パチンコ業界や公営賭博の運営者にも積極的に協力させることである。

 本人や家族の申告に基づき、ギャンブルが行われている場所への出入りを制限したり、ネット経由を含めて馬券や舟券の販売規制を強めたりすることで、のめり込みを防ぐ効果が期待できる。たばこ購入時のタスポのようなカードシステムをつくって、提示などを義務づけるべきだという声もある。

 ギャンブルは所管省庁が分かれ、自治体も関係するため、対策の足並みをそろえるのが難しいといわれてきた。法律の施行を機に、収益よりも不幸になる人を減らすことを最優先において、知恵を出し合うべきだ。

 安倍政権は多くの反対や懸念を押しきって、カジノの導入を決めた。依存症対策はその言い訳として、とりあえず行うものなのか。それとも法律でうたうとおり、「国民の健全な生活」「安心して暮らすことのできる社会」の実現に本気で取り組むのか。具体策が問われる。

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