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 外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案に対し、さまざまな懸念や疑問が噴きだしている。

 日本で知識や技能を学び、母国で生かしてもらう技能実習制度と、政府が設けようとしている特定技能資格との関係も、その一つだ。外国人を使い勝手のいい労働力ととらえる姿勢が、ここにも見え隠れする。

 新資格は、一定の技能や日本語能力があることを試験で確認できた外国人に与えられる。ただし政府は、3年間の技能実習経験があれば、そうした手続きは不要とする方針だ。

 このまま法案が成立したら、どんな事態が想定されるか。

 政府の考え通り来年4月に改正法が施行されたとしても、外国にPRする時間は限られる。初年度は4万人程度が新たな資格で働くという試算があるが、技能実習生からの移行組が多くなるとみられる。

 技能実習制度は、長時間労働や賃金の不払い、雇用主による暴力など、数々の人権侵害行為の温床となってきた。国際貢献の看板を掲げながら、安価な労働力の確保策として使われてきたのが現実だ。ここを正さずに新資格と接続させるのは、矛盾の温存以外の何物でもない。

 象徴的な数字が、先日の国会審議で明らかになった。受け入れ先の企業などから失踪した実習生の数が、今年上半期だけで4279人にのぼったという。過去最多だった昨年の7089人を上回る勢いだ。

 過酷な労働実態が失踪などを生んでいるとして、監督を強化する法律が昨年施行された。にもかかわらず、なぜ改善に向かわないのか。その検証と対策こそを急ぐべきではないか。

 上限5年の実習生から特定技能資格者に移れば、日本で10年間働ける。母国への技術移転という目的はどうなるのか。山下貴司法相は国会で「技に磨きをかけて帰国すれば趣旨は全うされる」と答弁したが、言い逃れにしか聞こえない。しかもこの10年間は家族の帯同を禁じられる。あまりに酷な話だ。

 政府は、技能実習制度の反省を踏まえ、特定技能資格者については、同じ職種内で勤務先を変えることを認め、日本人と同等以上の報酬を支払うようにするという。ところが法案にそうした規定はなく、後に省令などで定めるとしている。本気度を疑わざるを得ない。

 外国人政策は、経済動向や業界の要望に応じて継ぎはぎを重ねてきた。同じ愚を繰り返してはならない。過去を直視し、筋の通った仕組みを整える時だ。

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