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 皇太子さまが新天皇に即位する来年5月1日を祝日とする法案が、きのう閣議決定された。

 政府は常々、代替わりが「国民がこぞってことほぐ中で、つつがなく行われるようにする」と表明してきた。人々に祝意を強制するような物言いは厳に慎むべきだが、当の政府の対応によって、「こぞって」から遠い状況が生まれつつある。それが現実ではないか。

 法案が成立すれば、祝日法の定めに従い、来年は4月27日の土曜日から5月6日のこどもの日の振り替え休日まで、実に10連休になる。長期休暇を歓迎する人ももちろん多いだろう。

 一方で、日給制のため休日増は収入減に直結する▽通院・投薬や介護に支障が出る▽保育園が長く休みになると子どもを預けられる先がない――など、様々な事情から頭を抱えている人が大勢いる。お金やモノの流れがどうなるかも心配だ。

 だがこうした声は政府の耳には入らないようだ。菅官房長官は会見で、連休が「ゆとりのある国民生活」をもたらすことへの期待を語っただけだ。法案審議の中で、政府として考えている措置があるのか、民間や個人の工夫に任せるしかないのかを丁寧に説明する必要がある。それを踏まえ、個々の「自衛策」を練ることになりそうだ。

 そもそも、区切りのいい1月ではなく、年度が替わる4月でもない、5月1日の即位と改元を決めたのは安倍政権だ。

 年初は皇室の行事が重なる、4月は統一地方選があって慌ただしいなどを理由に挙げたが、市民のくらしへの影響をどこまで真剣に考えたうえでの判断だったのか。朝日新聞の社説は繰り返し疑義を表明してきたが、その思いはますます深い。

 新しい元号を公表する時期もいまだに明らかにされない。

 コンピューターシステムの改修や検証が間に合うのか不安は尽きず、混乱が予想される。だが右派勢力や議員らは「天皇の権威にかかわる」として、事前公表そのものに反対の構えをとる。首相の支持基盤の意向とあって、政府もむげにできない状態が続く。結局、ふつうの人々の懸念や戸惑いは、ここでも置き去りにされたままだ。

 退位問題が浮上して以降、天皇の地位は「日本国民の総意に基(もとづ)く」という憲法の定めに注目が集まり、多くの理解と支持があって初めて、象徴天皇制は成り立つことが再確認された。

 戦後長い時間をかけて、皇室と国民との間でつちかわれてきた関係を、大きく傷つけかねない政府の迷走ぶりである。

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