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 時速100マイル(約160キロ)を超す速球を投げ、豪快な振りで本塁打をかっ飛ばす。

 ことしから米大リーグに移った大谷翔平選手が、アメリカン・リーグの新人王に選ばれた。

 「二刀流」への驚きと高評価が裏打ちされただけではない。野球を愛し、プレーを楽しみ、挑戦を続ける姿への共感が広がった証しといえるだろう。

 二刀流は、「野球の神様」と称されたベーブ・ルース以来として注目された。ただ、大谷選手は、本塁打数などでは有力ライバルに及ばなかった。投手としては今季の途中に右ひじを痛め、本領を出し切れなかった。

 それでも、投票した記者の多くが真っ先に大谷選手を推した。盗塁を重ねた走力を含め、投げる、打つ、走るのすべてで底知れぬ能力を見せた衝撃がいかに大きかったかを物語る。

 子どものころ、テレビで日本人選手の挑戦を見て、「自分も行ってみたいなと思った」。1年前、そう語って大リーグへの移籍を決めた。規定により年俸が抑えられるにもかかわらず、夢を追うことを優先した。

 新人王が決まった後の記者会見では、「いい方向に成長できた。うまくなれたと思う」と、野球少年のように語った。

 9月、右ひじに新たな損傷が見つかり、手術を勧められた時は落ち込んだという。だが、その日の試合で本塁打を2本放った。「とにかく野球がしたい」という純粋な思いが、この若者の力の源泉なのだろう。

 それは、過去の新人王に輝いた先輩にも共通する。体を大きくひねる投法で人気を呼んだ野茂英雄投手。入団会見で喜びから無邪気に体を一回転させ、数々の安打記録を立てたイチロー選手。ともに口数は多くないが、個性豊かなプレーで野球への熱い思いを表現してきた。

 無謀との批判も絶えなかった大谷選手の二刀流への道を支えたのは、5年を過ごした北海道日本ハムファイターズの関係者だ。栗山英樹監督らによる大谷選手の育て方は、指導者と選手の関係に一石を投じた。

 選手の能力と意思をていねいに見極める。型にはめず、個人として尊重し、練習や試合での起用法を工夫する。天性の素質だけでなく、そうしたきめ細かい育成の環境がそろってこその開花だった。

 大谷選手は来季、ひじの手術の影響で打者に専念することになりそうだが、リハビリを重ねて二刀流の復活をめざすという。その新たな挑戦を見守りながら、スポーツの原点と人間の可能性について考え続けたい。

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