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 国民の命を守る自衛隊が、逆に国民を危険にさらす。あってはならない深刻な事態であり、防衛省・自衛隊は経緯を徹底的に検証し、再発防止に力を尽くさねばならない。

 滋賀県高島市の陸上自衛隊饗庭野(あいばの)演習場で14日、訓練中に発射した81ミリ迫撃砲の実弾が目標から1キロそれた。着弾した道路のアスファルトなどの破片が、隣接する国道に止めていた乗用車の窓ガラスを割った。運転席にいた71歳の男性は無事だったが、ひとつ間違えれば命にかかわる重大な事故である。

 山崎幸二陸上幕僚長は「人的ミスが有力な要因」と認めた。隊員が照準を誤って設定した可能性が高い。1、2発目の着弾地点を確認せず、3発目の照準を200メートル先に修正したことで弾が演習場の境界近くまで達していた。安全確保の基本動作はどうなっていたのか。

 饗庭野では3年前にも、射撃訓練の銃弾1発が、演習場から3・5キロ離れた民家の屋根を突き破る事故があった。このとき陸自は、安全管理に「万全の措置」を講じ、事故時には速やかに通報するという覚書を高島市と交わしていた。

 にもかかわらず、今回、市への連絡は発生の2時間半後、地元警察から乗用車の被害を知らされてからでも1時間半後だった。これでは、地域住民の信頼を保つことなどできない。

 防衛省は当面、饗庭野での実弾訓練を中止すると決めた。北海道などの演習場に比べれば手狭で、民家や国道が近くにあることを考えれば、実弾を使う訓練が適切なのか、より慎重な判断が必要ではないか。

 今月に入り、自衛隊による重大な事故が相次いでいる。

 2日には、福岡県の航空自衛隊築城基地所属のF2戦闘機2機が、海上で訓練中に接触し、垂直尾翼などを損傷した。

 7日には、青森県の航空自衛隊三沢基地の大型トラックが道路をはみ出して住宅に突っ込んだ。家人が留守でなければ人命にかかわる事態だった。

 そこに、3週連続となる饗庭野の事故である。

 年末に控える防衛計画の大綱の改定に向けて、宇宙やサイバー、電磁波といった新しい分野への対応が議論されている。そのこと自体は重要だとしても、変化を迫られる自衛隊の現場で何が起きているのか、改めて点検した方がいい。

 日常の訓練や兵器の維持・整備などに問題はないか。国民の命はもとより、隊員の安全を守るためにも、足元を見つめ直す作業が急務である。

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