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 難民の帰還は、戻ってからの身の安全が保障され、かつ自発的であることが前提だ。この原則はゆるがせにできない。

 東南アジアの西端ミャンマーからバングラデシュに逃れた、70万人を超すロヒンギャ難民が重要な局面にある。

 ロヒンギャはミャンマー西部に暮らす少数派イスラム教徒だ。治安部隊による掃討作戦をきっかけに、昨年8月から隣国に逃れてきた。

 その難民について、ミャンマー政府は「安全に生活する環境は整った」として、今月中旬に帰還を始めることでバングラデシュ側と合意したと発表した。

 だが、その主張は額面通りに受け止められない。国連の人権高等弁務官は13日、ロヒンギャの命を危険にさらすとして帰還の中止を求めたのである。

 国連人権理事会の調査団長は先月、「残されたロヒンギャは被害を受け続けている」と述べていた。特定の民族や宗教に属する集団を殺害するジェノサイドが進行中だとも指摘した。

 このまま帰還を強行すれば、再び迫害を受けかねない。劣悪な環境の難民キャンプでの生活が長引くことは望ましくないが、強制送還ともいえる事態は容認できない。

 第1陣の対象2200人あまりのうち、最初の150人について、バングラデシュ当局は15日に移送を始めようとした。だが、不安を強める難民は応じず、当局も断念した。

 これについてミャンマー政府は「バングラデシュ政府が十分に準備をしていなかったのが原因だ」と批判した。無責任もはなはだしい。

 問題の根源は、ミャンマー政府による迫害である。難民が暮らしていた村がいまどんな状況にあるのか、国際社会が納得できるよう説明するべきだ。現地の様子を国連や外交団に公開することも欠かせない。

 この問題をめぐる国際社会の視線は厳しい。最近もマレーシアのマハティール首相や米国のペンス副大統領が、事実上の政権トップであるアウンサンスーチー国家顧問を批判した。

 これに対し、日本はスーチー氏と「共に考え、取り組みを支える」としてきた。柱は難民への人道支援である。であればなおさら、意に反した拙速な送還を黙認することは許されない。

 同時に、スーチー氏には問題の根本的な解決に向けた道筋を示すよう促すべきだ。軍の責任を明らかにすることや、ロヒンギャへの国籍付与の検討などが含まれよう。それなしには、難民の不安は解消されない。

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