[PR]

 意見が異なる二つのグループを橋渡しするとは、双方から信頼され、接点を設けながら打開策を探ることだろう。

 日本は、核兵器禁止を求めるグループと、核保有国を中心に核の抑止力に頼るグループの橋渡し役を自任する。しかしその現実は、成果をあげられていないどころか、唯一の戦争被爆国として得てきた信用がますます揺らぎかねない状況だ。

 今月初め、軍縮を協議する国連総会第1委員会で、核を巡る二つの決議案が採決された。

 一つは、昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約の署名・批准を求める決議案。120カ国超の賛成で採択されたが、日本は米国、ロシアをはじめとする核保有国などとともに反対した。条約には当初から一貫して距離を置いている。

 条約を推進する国から、再び日本への落胆と批判が漏れた。広島と長崎の被爆者も条約締結を待望しており、「裏切られた」との声が改めて広がった。

 もう一つは、日本政府が主導した核兵器廃絶の決議案だ。160カ国の賛成を得て25年連続で採択されたが、昨年に続いて核禁条約に触れず、条約推進国には棄権が目立った。

 核保有国も、昨年は賛成した米と仏が棄権した。今年の決議が昨年より核軍縮のトーンを強めたことが影響したようだ。

 「橋渡し」は迷走しているのではないか。そんな危機感が強まっている。

 広島市長が会長を務める平和首長会議は今月上旬、大半の市区町村が名を連ねる国内加盟都市会議を岐阜県で開いた。会場では「橋渡し役をどういう形で実現してくれるのか」と不安が聞かれ、安倍首相宛ての要望に核禁条約の締結を盛り込んだ。

 日本政府が主催する「賢人会議」は、国内と核保有国、非保有国の有識者とともに、「橋渡し」の道を考えるのが狙いだ。

 今月中旬に第3回会合が長崎市であった。「原子雲の下にいた人間がどうなったか、そこをふまえて安全保障を議論してもらいたい」(田上富久・長崎市長)との声が寄せられていたが、被爆者やNGOは会議に不満を募らせ、賢人会議の有識者との面会では「橋渡しはただ傍観することではない」といった発言も飛び出した。

 日本政府は、被爆国としての原点に立ち返るべきだ。

 被爆者の声を受け止め、核兵器の非人道性を訴える。米ロ両国が核兵器を重視・強化する姿勢を見せているだけに、「核なき世界」への責任と役割の大きさを自覚しなければならない。

こんなニュースも