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 こんなボロボロの状態でも、政府与党は強引に成立させようと本気で考えているのか。外国人労働者の受け入れ拡大をめざす出入国管理法改正案への疑問が、さらに膨らんでいる。

 ひとつは、いまの技能実習制度について法務省が国会に提出した資料の誤りに伴うものだ。

 実習生が受け入れ先企業から姿を消してしまう例が昨年だけで7千件を超え、問題になっている。後に居場所が確認できた約2900人から聞き取りをした結果として、法務省は約87%が「より高い賃金を求めて」失踪したと説明していた。

 だが正しい数字は約67%だった。しかも「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」の3項目にチェックが入った数を合算した数字だという。

 結果として、法令や契約を守らない劣悪な労働環境があることは覆い隠され、実習生のわがままが失踪を生んでいるような印象を社会に振りまいたことになる。山下貴司法相も衆院本会議で同様の答弁をし、いまも撤回されていない。

 賃金だけではない。失踪した原因として「指導が厳しい」との答えが5・4%から12・6%に、「暴力を受けた」が3・0%から4・9%に訂正された。ずさんさに驚く。「その他」が15・3%あるが、内訳を見ると職場環境や労働条件への不満、人間関係などを挙げているものが少なくないという。

 法案は、実習生は新設される在留資格「特定技能」に移行できるとしており、政府は新資格で働く人の半数程度を占めると見込む。土台となる現行制度に対する正しい認識をもつことから、やり直す必要がある。

 もうひとつの疑問は、政府と与党の間に見逃せないズレが生じたことだ。18日のNHKの番組で自民党の田村憲久政調会長代理は、技能実習をきちんとした雇用に置き換えていくのが、「特定技能」だと述べた。

 はじめて聞く話だ。政府はこれまで、二つの制度は別のもので、技能実習は存続させると説明してきたはずだ。党の政策調整の要の地位にある人物と政府の言い分が食い違う。法案の目的さえ共有できていないことを示す事実ではないか。

 今年の通常国会でも、働き方改革をめぐる政府の調査データに誤りがあり、混乱を招いた。森友学園問題では、政府にとって都合のいいように改ざんされた資料が国会に提出された。

 立法府を愚弄(ぐろう)する出来事が相次ぐ。審議時間を十分とり、正確で丁寧な説明をすることが、政府に課せられた責任である。

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