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 国際的大企業のカリスマ経営者が、長年不正を働いていたとして社内から告発され、東京地検特捜部に逮捕された。驚くべき事態である。

 日産自動車は、カルロス・ゴーン会長とグレッグ・ケリー代表取締役に重大な不正行為があったと発表した。有価証券報告書にゴーン会長の報酬を実際より少なく記載していたほか、会社の資金を私的に使っていたという。特捜部によると、過少記載は50億円にのぼり、金融商品取引法違反の疑いがもたれている。

 現時点でゴーン会長側の主張は明らかではない。日産は捜査中を理由に、社内調査結果の公表をほとんど拒んでいる。

 捜査との兼ね合いは確かにあるだろう。だが、有価証券報告書は、企業の情報開示の基礎をなす文書だ。しかも代表取締役3人のうち2人の職を解こうというのである。顧客、従業員、株主に対してできる限り実態を明らかにし、対応策を示さなければ、企業として立ちゆかなくなる恐れがある。

 ゴーン会長は、1999年に日産が経営支援を仰いだ仏自動車大手ルノーから派遣され、00年に社長に就任。昨年まで最高経営責任者(CEO)を務めた。工場閉鎖や人員削減、系列取引見直しに辣腕(らつわん)をふるって業績を回復させ、05年からはルノーのCEOも兼任した。

 地検や会社の発表が事実とすれば、20年近くに及ぶ長期政権で権力が集中し、企業統治に不全をきたしていたことになる。ゴーン会長については、公表された報酬についても、その巨額さが度々批判を受けていた。

 一方、日産では昨年、完成車検査での長年にわたる不正が発覚し、経営陣と現場の間の溝の深さが明らかになった。ゴーン会長はこの件では公の場に現れず、説明責任を果たしているか、疑問符がついていた。

 西川広人社長はおとといの会見で、「第三者の専門家を入れた委員会を早急に立ち上げ、背景、要因などを掘り下げる」と述べた。必要な措置であり、急いで進めるべきだ。西川社長自身、05年から副社長を務めてきた立場であり、より客観的な視点での検証が不可欠になる。

 今回の地検の捜査では、ゴーン会長の部下との間で司法取引が適用されたという。組織のトップの刑事責任を追及するために用いるのであれば、制度の趣旨に照らして、国民の理解は得られやすいだろう。ただ、他の幹部や組織の責任について不透明感が残らぬよう、検察自身が丁寧な説明に努めてほしい。

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