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 文化や風習への評価は時代や場所によって移ろう。同じ時期、地域に暮らす人々の間でも好き嫌いは分かれる。

 タトゥー(刺青〈いれずみ〉)は、そんな例のひとつと言えるだろう。

 ニュージーランドのマオリをはじめ、伝統文化として受け継ぐ先住民族が世界各地にいる。日本でも古代に慣行があったとみられ、近世まで北海道のアイヌ民族や琉球(沖縄)などの女性の儀礼だった。半面、江戸時代には罪人の目印ともなり、明治期に入って取り締まりが強化され、戦後は映画などを通じて暴力団を連想させる否定的な印象が定着した。

 そのタトゥーについて考えるきっかけとなる判決が今月、大阪高裁であった。医師免許がないのに客にタトゥーを施したとして医師法違反の罪に問われた30歳の男性に、逆転無罪が言い渡された。

 タトゥーは装飾的、美術的な意義がある社会的な習俗という実態があり、医療を目的とする行為ではない――。判決はこう述べ、「タトゥー施術業は正当な職業活動」と指摘した。

 兵庫県警が10年に彫り師を初めて医師法違反で逮捕して以来、警察は暴力団摘発に同法を適用。彫り師は暴力団関係者以外も含めて罰金を命じられてきた。今回の初の高裁判断はその流れに待ったをかけ、芸術性にひかれて彫り師になった男性の主張を認めた。

 公衆浴場などでは「入れ墨」のある人の入場を断る掲示が広く見られる。暴力団関係者を受け入れないという、社会の決意を示す取り組みの一つだ。

 一方、外国人との間でトラブルが起きている。先住民族のほか、ファッションなどの理由で施す人が多いためだ。

 観光庁の3年前の調査では、約600の宿泊施設のうち「入れ墨」のある人の入浴を断る所が過半数だったが、断らない施設も約3割あり、条件つきで認める施設は1割強だった。

 大分県別府市の温泉施設を紹介するパンフレットは、家族風呂など個室なら受け入れる所を含め、入浴の可否を「○」「×」「△」で示す。訪日客が急増するなか、誤解や摩擦を防ごうと各地で試行錯誤が続く。

 自己表現としてタトゥーを楽しむ人は日本人でも増えているようだ。ただ、タトゥーには感染症や健康被害の恐れがある。その周知や予防のための態勢づくりも急がねばならない。

 入れ墨、刺青、タトゥー。どう向き合っていくか、多様な視点を大切にしながら議論を重ねていきたい。

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