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 「子ども乗せ自転車」になる場面の一つが、朝夕の保育園などへの送迎です。仕事と育児に追われて忙しい保護者にとって、徒歩より早く移動できる自転車は便利ですが、そもそも、送迎時の「子ども乗せ自転車」を無くすことや、その時間を短縮することはできないのでしょうか。自治体やタクシー業界の取り組みを紹介します。

 ■雨天、使わない/免許制に

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

     ◇

 ●「小さい子2人を歩かせたらどれだけ時間がかかり、まわりに迷惑がかかり、リスクに肝を冷やしているか、わかりますか? スマホを見ながら周りにも気づかない大人がたくさんいます。社会全体のマナー向上も願います」(東京都・30代女性)

 ●「スピードを抑えて、とにかく運転に集中する。視界の悪い雨の日や強風の日などは極力自転車は使わないようにしている。本来ならば子供の手を引いてゆっくり歩いて目的地まで行きたいが、道が狭く車通りが多かったりすると自転車の移動以上に徒歩の方が危なく感じる。もっと安心して歩ける道が増えてくれればと思う」(神奈川県・30代女性)

 ●「自分の命だけでなく大切なわが子の命を預かっている自覚を持って頂きたい。子供を乗せた状態での『暴走』『信号無視』『スマホいじり』などをする若いお母さんたちを本当によく見かけ、私自身も自転車通勤していますが、時として衝突事故を起こしそうになります。信号無視やスマホいじりをしながらの運転などは、絶対にやるべきではありません」(東京都・50代男性)

 ●「私は視力に障害があり視野が狭いのですが、歩道を歩いているときにお構いなしに爆走してくる子ども乗せ自転車は恐怖以外の何ものでもありません。急いでいるのでしょうけど、ぶつかるとおおごとになります。マナーだけで交通秩序や安全が確保できない現状からみて、原付きバイク同様免許制にすべきであると考えます」(山口県・60代男性)

 ●「東京の娘の子供の世話で保育園送迎をしている。自転車で子供を前後に乗せる母親が多いのに驚く。現在北海道では多くの働く女性は自分用の車を所有し子供の送迎につかうが、東京では所得は高くとも駐車場のコストが高く、車を持てず危険な自転車送迎が多い。少子化が憂慮される中、懸命に子供を産み育て働き続ける今の女性の負担の大きさの一端が、子供乗せ事故に表れている。オランダのような自転車道路の早急な整備を交通政策の最優先課題とすべきだ」(北海道・60代女性)

 ●「きょうだいができると、下の子・上の子も一人で見ないとならない時期があるのは確かです。車ならきょうだいを乗せられますが、自転車では無理があります。小型モビリティーなどを改造、首が据わらない子と上の子が乗せられるようにし、格安でレンタル(販売)できる仕組みはできないでしょうか。小回りが利いて駐車スペースをあまり必要とせず、走行安定、屋根付き、チャイルドシート・ベビーシートが備え付けられている小型モビリティー。私だったら使いたいです」(群馬県・40代女性)

 ●「踏切の横断など怖かった。また、押して歩くのもバランスがとりづらく難しかった。人混みなんて怖くて通れなかった。交差点付近の急勾配など、ヒヤッとした。保育園の通園には荷物が多く、後ろにもかごや子供のシートがあるとおんぶも難しい。男女等しく柔軟に働ける環境整備と、必要な時に外の力を借りやすい体制。マンション建設時に近隣の保育所や学校定員に合わせて建設者にも負担を求めては。母親学級か、産後指導の中での安全教育も必要では」(東京都・50代女性)

 ■送迎バス、親の負担減

 駅の近くから保育園などに送迎する保育ステーションを民間委託したり、民間保育所が通園バスを購入するための補助を出したりしている自治体もあります。待機児童を減らす政策の一つですが、保護者の送り迎えの負担も減っています。

 「お帰りー」

 保育士に声を掛けられながら、園児たち数人がワゴン車から次々と降りてきました。室内に入り、ままごと遊びなどを始めます。

 東京都町田市が民間に事業委託する送迎保育ステーション「つながり送迎保育園・もりの」の夕方の風景です。同市中心部の町田駅から徒歩約5分。現在利用するのは1歳から小学校入学前の29人です。

 保護者は朝の通勤前にステーションに子どもを預けます。子どもは専用車で郊外の保育園やこども園に送り届けられます。日中はそれぞれの保育園などで過ごし、夕方に車でステーションに戻り、仕事帰りの親を待つ仕組みです。町田駅近辺の保育園などは定員いっぱいですが、郊外には空きがあります。昨年10月に待機児童対策の一環で始まりました。

 利用者の一人、鈴木亜祐美さん(36)は自宅近くにステーションができ、自転車の利用時間が10分から5分になりました。「5分違うだけで気持ちに余裕が持てます」

 同様のステーションは千葉県流山市でも実施されています。

 一方、2011年度からステーションを始めた横浜市。翌年度に5カ所まで増やしましたが、今年度で新規募集をやめます。「駅遠くの送迎できる園の定員が埋まるなど、状況が変わった」そうです。

 いま力を入れるのは、民間保育所による通園バス購入の補助。車1台とチャイルドシートなどの備品購入費の一部に補助金を出します。本年度は3台分の応募がありました。

 バスを購入した保育所は自宅近くまで子どもを送迎します。親は「子ども乗せ自転車」をする必要がなくなります。(高野真吾)

 ■タクシー活用、費用の課題も

 タクシー業界には、子育て支援に取り組む会社があります。神奈川県海老名市の「ハートフルタクシー」は、創業した2006年から、子どもだけを乗せて、学童保育や塾の送迎を手助けするサービス「キッズタクシー」を走らせています。

 利用者は、事前に子どもの情報を登録し、運行する経路を確認します。登録無料で、運賃は通常のタクシー料金と同じ。目的地に到着したあと、保育士や塾の先生のもとに連れて行くところまでがサービスに含まれています。生後6カ月以上の0歳児から利用が可能です。

 また、乗り合いもできます。学童保育を運営するNPO法人と契約を結び、複数人の子どもを順に自宅に送り届ける利用方法が多いと言います。運賃は使った分だけ、1カ月ごとにまとめて払うので、子どもにお金を預ける必要はありません。

 同社は、営業所の隣に保育所を設けており、女性ドライバーが約4割在籍。キッズタクシーの運転手の多くが自身も子育て中のママさんドライバーです。加藤知枝さん(35)もその一人。5歳の息子を育てています。利用者からは、「安心できる」と好評だと言います。加藤さんは、「自分も運転手になるまで、タクシーには『サラリーマンの乗り物』という印象があった。そういう印象が変われば、子育て中の親も利用しやすくなるはず」と話します。

 こうした取り組みは全国的にあります。06年に発足した「全国子育てタクシー協会」には現在、28都道府県の148社が加盟。加盟社では、子育て家庭のニーズなどを伝える養成講座を受けたドライバーが、子育てタクシーを運転しているため、利用者としては安心です。

 しかし、タクシー業界全体で見れば、まだまだ運行会社が多いとは言えません。子育てタクシーは、通常より手間と時間がかかり、ニーズが高い通園・通学時間がサラリーマンの通勤時間とも重なるため、なかなか理解が進まないのも実情です。

 何より、タクシーは自転車や公共交通機関に比べ、お金がかかります。同協会事務局長の波木井(はきい)美由紀さんは「料金を安くして、サービスの質が低下しては本末転倒。タクシー会社だけではなく、行政の支援や制度も必要」と話します。(安藤仙一朗)

 ◇来週12月2日は「認知症、前を向くために:1」を掲載します。

 ◇アンケート「認知症になったら」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

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