(社説)消費増税対策 便乗は認められない
消費税率を来年10月に10%に引き上げるときの経済対策が、ふくらむ一方だ。
たとえば、中小小売店に限ったポイント還元策。クレジットカードなどのキャッシュレス決済にポイントがつくしくみで、安倍首相が導入を指示した。政府は増税幅と同じ2%の還元を考えていたが、首相自らが、5%に広げる方針を示した。
公明党は、プレミアム商品券の発行を求める。マイナンバーカードにためて買い物に使えるポイントが加算されるプレミアムポイントは、自民党が提言した。すでに決まっている食品などへの軽減税率に加え、政府はこれらすべてを実行する方向で検討する。
考え直すべきではないか。
「還元」や「プレミアム」と聞こえはいいが、消費者に戻る分のお金や必要な経費は、税金が使われる。
増税後の半年から1年ほどの期間に、だれにどんな政策が求められるのか。不公平になってはいないか。全体の整合性を考えて絞り込むべきなのに、次々に浮上する案が、そのままメニューに加わっていく。増税対策に名を借りた便乗を、見逃すわけにはいかない。
ポイント還元に、キャッシュレス化を進める目的があることを、政府は隠そうとしない。体力に乏しい店を税金で支える中小企業対策、とも位置づける。
プレミアムポイントも、12%程度の人しか持たないマイナンバーカードを普及させる狙いが、出発点にある。しかしカードにポイントをためて地域の商店などで使えるしくみがある自治体は、ごく一部だ。増税後すぐの対策にはなりそうにない。
プレミアム商品券は、所得の低い世帯と0~2歳の子どもがいる世帯が対象で、1千円券など少ない金額でも買えるようにする。明確に低所得者への支援策とするようだが、周りからわかってしまうようでは、使うのをためらわないか。
過去の似たような政策である地域振興券やプレミアム付き商品券は、内閣府の推計でも国費を投じた額の3~4割程度しか、新たな消費を押し上げる効果はなかった。
安倍首相は「国内消費を冷え込ますことのないよう、十分な消費税対策を来年度予算に盛り込む」との方針を繰り返す。
お得そうな面を強調するばかりでは、厳しい財政事情の中で貴重な税金を使うのに、説得力がない。ねらいや公平かどうかを突き詰め、多くの人が納得できる対策に仕上げるべきだ。
いまなら、まだ間に合う。
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