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 ■中央大×朝日新聞

 大学は新しい価値の創造に挑む。朝日新聞社と中央大学は共催で、シンポジウム「異分野融合でイノベーションを起こす」を開いた。朝日新聞社が15大学と協力する連続シンポジウム「朝日教育会議2018」。大学組織、防災など、さまざまな分野の革新、イノベーションを議論した。

 【東京・丸の内、サピアホールにて11月7日に開催】

 ■来春から2新学部 「国際経営学部」体系的な知識持つリーダー育成/「国際情報学部」ITと法、グローバル教養学ぶ

 中央大学は、2019年春に二つの学部を開設する。国際経営学部と、国際情報学部だ。ともに、グローバルビジネスリーダーの養成をめざす。それぞれの学部について、開設準備室長の石川利治教授と平野晋教授が紹介した。

 国際経営学部は、世界中に生産が分散し、それを管理する機能もまた世界中に散らばるグローバル経済に対応する。

 世界がつながるなかで散らばった生産や機能をまとめる理論、政策、歴史、統計、文化、言語などの体系的な知識と技能を学ぶ。企業や経済組織をリードする人材を育てる。

 約150の科目の70%近くは英語で授業をする。大学の多摩キャンパスが位置する東京都八王子市などの地域社会のグローバル化にも貢献したい。

 国際情報学部は新宿区、市ケ谷田町キャンパスで「iTL」を標語に掲げる。インターネットなどでできること「information Technology」(情報技術)と、やっていいことと悪いこと「Law」(情報の法学)を融合して学ぶ。多様性や異文化の尊重、持続可能な発展といったグローバル教養を身につけ、国際社会での力をつける。

 専任教員21人のうち4分の1が女性、4分の1が大手シンクタンク経験者という。ICT(情報通信技術)系のグローバル企業や公務員、シンクタンクなどで活躍する人材をめざす。

 

 ■パネルディスカッション

 有川太郎さん 中央大学理工学部教授

 佐藤信行さん 中央大学大学院教授

 岸博幸さん 慶応義塾大学大学院教授

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 パネルディスカッションのテーマは防災。工学、法学、経済政策という異なった立場から討論した。(進行は井原圭子・朝日新聞社教育コーディネーター)

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 井原 2011年の東日本大震災のあと、防災の仕組みは何が変わったのか?

 有川 それ以前は堤防で背後地を守るのが基本だった。だが「堤防で安心して逃げなかった」という例もあったかもしれない。そのため、中央防災会議で「今後は避難を軸にして考えよう」という大きな政策転換をした。

 30分ぐらい避難時間を稼ぐためならば、実はそんなに堤防を高くする必要がない。高くなくても大丈夫な堤防を造り、自然と共生できるような仕組みをつくってゆけないか。そう考えている状況だ。

 佐藤 政府の第一の役割は国民の生命を守ること。憲法は13条で「個人の尊厳」、25条で「生活を営む権利」、29条で土地収用など私有財産を「公共のために用いる」政府権限を定めているが、ここから「できることはなんでもする」ハード整備を正当化するのが2011年以前の防災政策の論拠だった。

 岸 インフラの考え方は進化した。ベースは憲法上の要請だ。でもそれがうまく回っていない。霞が関の縦割りの弊害が非常に大きい。

 佐藤 確かに。国家賠償法2条は、堤防などの設置または管理に欠陥があって被害が生じたら国などが賠償する責任を定めている。国としてはこの発動を避けるために、インフラ整備を行うことが正義となる。「命が大事」という憲法が、ハードウェアをガチガチに整備する考え方につながってきた。

 井原 要は、国が訴えられて負けないように堤防を高くしておこう、ということか。

 佐藤 そう。ただ、現代の医学ではQOL「クオリティー・オブ・ライフ」と呼ぶ、患者の生活の質こそ守るべき価値だ、という考えがある。命を永らえさせるのが目的という古典的な医の倫理から大きな転換だ。

 これと同じことが、社会のいろんな分野で必要になる。防災についても、よく生きるにはどうするか、QOLの考えを社会システム全体にあてはめてゆく。そういう転換が必要ではないかと、法律学の世界では考えられている。

 岸 まさにQOLという概念が政策、とくに経済政策の概念から欠如している。どう政策に取り込んでゆくか。一番考えないといけない課題だ。

 井原 ここで避難についても考えたい。本当にちゃんと避難できるのか。8月22日に東京都墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区が大規模水害に伴う広域避難計画を発表した。すごいことが書いてある。「あなたのお住まいや区内に居続けることはできません」。上下水道、電気、ガス、全部使えなくなる。ほとんどが水没し、長いこと水が引かず、住んでいる250万人が避難しないといけない。でも行政は避難所を用意できない。「各自で避難場所を確保してください」。とんでもないことでは。

 有川 数百万人もの人を一度に避難させるのは、行政側だけで考えるのは難しい。住民のご協力なくしては解決できないということで、こういう資料になっている。

 佐藤 自分で探せって言われても、とんでもない。とすると誰が用意するのか。

 国民を守るのは国家の責任なので、いざとなったら政府が最後まで面倒を見なさいという考え方が「公助」。この資料は、それができないという前提で「自分でやって」。「公助」から「自助」に一足飛びなので、無理を感じる。

 そこで考え出されるもう一つのアプローチが「共助」。ただ「助けあい」と口で言うのは簡単だが、気持ちだけあってもだめだ。技術やお金によって支えられていないと。法律学、防災科学、経済的な側面からのサポートを全部組み合わせたイノベーションが必要になる。

 井原 人口減少も影響しているのか、コミュニティーが機能しなくなってきている。そのなかで共助をどう作っていくべきか。

 岸 避難計画をしっかり作りながら、計画にはなかなか明示できないけども、共助をどう再確立するか。ベースはやっぱりコミュニティーだ。近代はコミュニティーの崩壊の歴史ともいえる。だが、どうすべきか考えないとまずい。

 自助、共助、公助という考えは災害対応だけで検討してはだめだ。地方自治に関係する。地方自治の本旨は、まず自助。足りない部分は共助。それでできない部分は公助。

 それをどう災害対応のレベルまで拡大するか。本来は国が設計しないといけない。そういったソフト面の制度の設計をしっかりやって、堤防などのインフラ、ハードと組みあわせることで、初めて有機的な対策になる。

 有川 災害においてもイノベーションは大事だ。適用する技術、仕組みだけではなく、法整備から経済政策まで再構築する必要がある。社会的な新しい切り口、新しい変革をもたらし、意識を改革し、災害に強い日本、災害に適応できる日本人を育てることが大切だ。

 岸 いちばん必要なイノベーションは省庁再編だ。日本は残念ながら、アメリカ政府みたいなFEMA(連邦緊急事態管理局)がない。ソフト、ハード両面を統合し、緊急時に迅速な対応をとれる組織がないと、災害分野の考え方、やり方を進歩させることができない。正しい対応を考えないと、イノベーションが生まれる環境にならない。

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 ありかわ・たろう 中央大学理工学部都市環境学科教授。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。元・運輸省港湾技術研究所勤務。私立大学研究ブランディング事業「災害適応科学プラットフォーム開発プロジェクト」代表者。

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 さとう・のぶゆき 中央大学大学院法務研究科教授。中央大学大学院法学研究科博士後期課程公法専攻満期退学、博士(法学)。私立大学研究ブランディング事業「比較法文化プロジェクト」代表者。専門分野は公法学・英米加法。

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 きし・ひろゆき 慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。一橋大学経済学部卒業。通商産業省に入省し、経済財政政策担当大臣秘書官など歴任。現在、国家戦略特区ワーキンググループ委員、福島県楢葉町顧問など。

 

 ■巨大なリスク、現実に向き合う 会議を終えて

 防災に携わる人ならだれもが知っている「津波てんでんこ」。この標語は講演会での発言から広まったという。異分野の専門家が議論すると新たなアイデアが生まれることがある。「防災」をテーマに工学、法律学、経済政策の各分野の研究者が集った今回のパネル討論も、そうした化学反応を目指した。

 例えば「防災にもQOL(生活の質)を」という提案。巨大堤防が壊れた東日本大震災以降、住宅地への浸水を許さない「絶対安全な堤防」から、浸水と避難を前提にした「逃げる時間を稼ぐ堤防」へと、防災対策は見直しを迫られている。あえてそれほど高くない堤防を造るのは、防災意識を高めるとともに、水辺に親しむ生活を守ることにもなる。

 医療現場はすでに「延命第一」から「QOL尊重」へかじを切った。防災にもQOLの発想が必要、とパネリストは口をそろえた。

 一方、避難を前提にするQOL型防災では、避難後の生活のケアが重要になる。佐藤信行教授の示した、公助や自助だけでない「共助」が求められる。

 思えば私たちは多くの巨大なリスクに目をつぶって日々、生活している。時には現実と向き合い、考えてみるべきなのだ。大学の知も、その手がかりにしながら。(井原圭子)

 <中央大学> 1885年、東京・神田で英吉利(イギリス)法律学校として創設され、1920年に中央大学となる。現在は、多摩と都心のキャンパスにある6学部で、2万4千人余りの学生が学ぶ総合大学。2019年春には、総合政策学部創設以来26年ぶりに、国際経営学部、国際情報学部の2学部を開設する。

 ■朝日教育会議

 国内外で直面する社会的課題への解決策を模索して広く発信することを目指し、15大学と朝日新聞社が協力して開催するシンポジウムです。12月まで、1大学1会議で開催します。各会議の概要と申し込みは特設サイト(http://manabu.asahi.com/aef2018/別ウインドウで開きます)から。

 共催大学は次の通り。

 青山学院大学、神奈川大学※、神田外語大学※、関東学院大学※、京都精華大学※、聖路加国際大学※、拓殖大学※、中央大学、東京工芸大学、東京女子大学、二松学舎大学※、法政大学、明治学院大学※、明治大学、早稲田大学(50音順。※がついた大学は、新聞本紙での詳報掲載は一部地域)

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