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 台湾の民主主義は、成熟を増している。今回も、中国との関係について、現状維持を志向する民意のバランス感覚を映しているとみるべきだろう。

 台湾の統一地方選で、与党民進党が大敗した。蔡英文(ツァイインウェン)総統は「責任をとる」として、兼務する同党主席を辞任した。

 敗北の主因は、内政問題である。蔡政権が、有権者や企業の痛みを伴う改革に切り込んだからだ。公務員や軍人らの年金を引き下げるとともに、大企業に抵抗があった労働環境の改善を図る法改正などを進めた。

 台湾も日本と同様に、社会の高齢化と財政難に悩んでいる。不人気でも必要な改革を断行したのは、冷静な実務型の蔡政権ならではだろう。

 ただ、不満を抑える工夫や指導力を発揮できなかったのは、政治家としての求心力の弱さゆえだ。一部の批判は中国との関係にも飛び火し、「北京との関係が悪いから、景気がよくならない」との言説も出た。

 だが、中台関係が緊張している主な原因は中国の強硬な言動にある。台湾の民意は中国との対立も、すり寄りも、いずれも望まず、微妙な平衡点の上にあることを忘れてはならない。

 2016年の総統選で蔡氏を勝利させたのは、馬英九(マーインチウ)・前総統の急速な親中路線を警戒した世論だった。一方で今回の住民投票では、中国が反対する「台湾」名義で東京五輪に参加申請することに賛成は少なかった。

 中国からの独立も統一も示さない。その姿勢を3年近く守った蔡政権は、民意をくんでのことだろう。今回の結果で浮足立つことなく、20年の次期総統選に向けても、穏健な対外政策を心がけてもらいたい。

 民意を読み誤ってはならないのは、政権だけではない。

 まず、与党民進党である。今後、党内から独立寄りの急進的な声が高まれば、中国との対立を深め、有権者の不信を招く。緊張の責任はあくまで中国にある実態を国際社会に強調するためにも、抑制的にふるまうのが台湾の利益になる。

 野党国民党も、手放しで勝利を喜べる状況ではない。民進党の牙城(がじょう)だった高雄市長に当選した党候補は、政党色を薄めた戦術が功を奏した。既成政党全体に冷ややかな目が向けられていることを認識すべきだ。

 中台関係を改善させるために最も自重すべきは中国だ。世界の航空会社に台湾の表記を変えるよう迫ったり、国際機関での台湾の立場を制限したり。そんな強圧手段で、台湾の民主社会を従わせることはできない。

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