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 歴代内閣が否定してきた空母の保有に向け、安倍政権が一線を越えようとしている。専守防衛からの逸脱は明らかで、認めるわけにはいかない。

 政府は、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を改修し、垂直着艦ができる米国製の戦闘機F35Bの運用を検討してきた。年末に改定する防衛計画の大綱に、それを可能とする表現を盛り込む方針だ。

 2015年に就役した「いずも」は艦首から艦尾まで通じる飛行甲板を持つ。護衛艦と称しているが事実上のヘリ空母だ。設計段階から、戦闘機を載せる改修が想定されていた。

 憲法9条の下、歴代内閣は、自衛のための必要最小限度の範囲を超える攻撃型空母は保有できないという見解を踏襲してきた。ところが政府や自民党は、表向きは空母でないと言いながら、既成事実を積み重ねる手法をとっている。

 自民党が政府への提言で、災害派遣などにも対応する「多用途運用母艦」という名称を使っているのが典型的だ。岩屋毅防衛相は27日の会見で「せっかくある装備なので、できるだけ多用途に使っていけることが望ましい」と語った。

 事実上、空母であることは明白なのに、言葉を言い換えることで本質から目をそらそうとする。安倍政権下で何度も繰り返されてきたことである。

 そもそも空母の導入が日本の防衛にどれほど役立つのか、巨額な費用に見合う効果があるのかについては、自衛隊や専門家の間にも疑問の声がある。

 政府や自民党は離島防衛や太平洋の防空への活用を強調しているが、「いずも」が現在担っている対潜水艦の警戒能力が低下すれば本末転倒ではないか。太平洋の防空を言うなら、自衛隊のレーダーや哨戒機の運用を見直すのが筋だろう。

 有事を想定した場合、敵のミサイルや潜水艦からどうやって空母を守るのか。空母を運用するには任務用、整備用、訓練用の3隻が必要とされるが、資金的にも人員的にも、今の自衛隊にそんな余裕はあるまい。

 強引な海洋進出を進める中国への対処は必要だとしても、空母には空母で対抗するような発想は危うい。空母の保有は、実態以上に日本の軍事重視のメッセージを送る恐れがある。

 米国製兵器の大量購入が地域の安定に直結するわけでもない。日米同盟を基軸としつつ、大国化した中国にどう対応するかは難問だ。不毛な軍拡競争を招かぬよう、注意深い手立てを考えねばならない。

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