[PR]

 外国人労働者の受け入れ拡大を図る出入国管理法改正案の審議は、舞台を参議院に移した。その矢先に、あっけにとられる光景がくり広げられた。

 29日の法務委員会で、与党の委員2人が割り当てられた時間を1時間残して質問を終えたのだ。1人は自民党の法務部会長を務める長谷川岳氏である。

 議論したらいくらでも問題点が出てくる――。はしなくも衆院で自民党議員がそう本音を吐露した法案だ。突っ込まれたくない政府に同調した行動と見るほかない。これこそ国会の「職場放棄」ではないか。

 賛成なら賛成の立場で、質問を通じて政府のていねいな説明を引きだし、国民に法案への理解を求める。そんな使命感は毛頭ないらしい。「良識の府」の名を自らおとしめる愚行であり、容認した野党側も批判されてしかるべきだ。

 その前日の参院本会議での安倍首相の答弁も、法案の生煮えぶりを改めて印象づけた。

 たとえば現行の技能実習制度では、外国で働き手の募集などをする業者をめぐって、法外な保証金を要求するなどの問題が起きている。首相は、新制度では悪質なブローカーの介在がわかれば、その労働者は日本に受け入れない方針だと述べた。

 だがそのためにどんな仕組みを作り、実効性を保つかについては「検討」の域を出ない。

 職場で仲間と連携してスムーズに働き、また地域でくらしていくうえで最も大切な日本語教育の取り組みも同様だ。

 これまでは「年内に示す総合対策に盛りこむ」と繰り返すだけだったが、ようやく「地方公共団体による日本語教室開設を支援する」と、いくらか内容のある答弁になった。

 しかし、その予算をいくらと見込んでいるのか。教師をどうやって確保し、教育の質を維持するのか。こうした肝心な点への言及は一切ない。

 ドイツやフランスは外国人労働者向けに数百時間の語学研修制度を公費で設け、韓国も同様の対応をしている。「自治体任せ」で日本は受け入れ国としての責任を果たせるのか。

 問題を指摘されるとあいまいな答弁で逃げ、それでは済まないとなると、対策らしきものを打ち出してみせる。だが相互の連関もあいまいなら、予算の裏付けもはっきりしない。結局は「がらんどう」のままだ。

 政府は今国会での法案成立を訴えるが、とてもそれに堪えうる内容ではない。参議院の存在意義が問われていると、議員一人ひとりが自覚するべきだ。

こんなニュースも