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 安倍首相が繰り返し口にしてきた「沖縄の皆さんの心に寄り添う」とは、つまりはこういうことだったのか。

 沖縄県の米軍普天間飛行場の移設をめぐり、岩屋毅防衛相は名護市辺野古の沿岸部に基地を造るため、今月14日から土砂の投入を始めると述べた。

 9月の知事選で県民は「辺野古ノー」の意思をはっきり示した。にもかかわらず工事を進める政府をただすため、県が国地方係争処理委員会に審査を申し出た矢先の表明である。

 民意を踏みにじり、紛争解決のために用意されている手続きも無視しての強行姿勢を、断じて認めることはできない。

 辺野古沖の大浦湾には262の絶滅危惧種を含む5800種以上の生物が確認されている。ひとたび土砂が入れば、この豊かな海に計り知れない打撃を与えることも忘れてはならない。

 政府の主張にはごまかしや矛盾が目につく。

 まず作業を急ぐ理由だ。

 普天間飛行場の危険性を除くには一日も早い返還が必要で、それが沖縄の負担軽減につながると説明する。数年内に実現するかのような言いぶりだが、県の見通しはまるで違う。

 埋め立ての本体工事に5年。防衛省自身の調査によって最近わかった、当初の想定をはるかに上回る軟弱な海底地盤の改良工事に5年。その後の施設整備などに3年――。最低でも13年はかかると見て、先月開かれた政府との集中協議で示した。

 費用も計画の2400億円ほどではとても足りず、10倍以上になると試算している。むろん国民の税金から支払われる。

 こうした指摘が間違っているというのなら、その根拠をデータをもって示し、共通認識をもったうえで問題の解決を探る。それが政府がとるべき態度だ。だが突きつけられた疑問には一切答えないまま「辺野古が唯一の解決策」を繰り返し、普天間の運用の見直しを米側に働きかけることもしない。およそ誠実な態度とは言いがたい。

 結局、集中協議も首相と玉城デニー知事との2度の会談も、話し合いをした形をつくるために開いただけではないか。4年前、当選した翁長雄志前知事との面会を拒み続けて批判を浴びた政権だが、やっていることは何ら変わらない。

 沖縄では来年2月24日に、埋め立ての賛否を問う県民投票が行われる。政府が工事を急ぐ背景には、その前に既成事実を積み上げ、反対派の勢いをそごうという意図が見え隠れする。政治の堕落というほかない。

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