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 第44期囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)が6日に開幕する。10期ぶりの名人復位を遂げた張栩名人(38)に挑戦するのは誰か。小林覚九段(59)、林漢傑八段(34)、大西竜平三段(18)が展望した。

 ■幅広げた山下 上位に強い鈴木 力試される芝野

 ――リーグの顔ぶれを見て、感想は。

 小林 井山さんの名がここにあることに違和感があります。七冠を独占して、ずっと挑戦者を待つ側にいたからね。あとはいつもの常連と思っていたら、予選勝ち上がり組の10~20代の3人が初のリーグ入り。若返りましたね。

 林 平成四天王世代の山下、河野、羽根、次いで井山世代の井山、村川、鈴木、そしてそのあとの新世代、芝野、孫、六浦。3世代対抗戦みたいですね。

 大西 井山先生と開幕戦で当たる六浦くんは、出場棋士のなかでもっとも異質。普通は石が込み合っているところから考えるけど、盤全体の空間を見ているイメージ。もしかしたら井山先生に一発入れるのではないか。

 小林 ここまで井山さんは碁聖、名人と続けて失った。勝負事というのは、相手の負ける姿を見た瞬間にいけると思うんです。そういう距離感がすごく影響する。かなわないのと、頑張ればいけると思うのとでは、全然違う。彼にとって環境は厳しくなっている。

 ――芝野さんは前期初のリーグ入りで6勝2敗の好成績でした。

 大西 上の人に対して結果を残せるのはすごい。

 林 国際戦にも強い。入段してまだ3年なのに、今年だけで中国の世界チャンピオン4人に勝っている。

 小林 盤を挟んでいて、闘志を感じないのに、そのくせ強い。これだけ勝ちまくると、しっかりマークされる。これから本当の力が試されると思います。

 ――天元戦で挑戦中の山下さんは、年明けの棋聖戦の挑戦も決めました。

 小林 本命でしょう。まっすぐな碁だった若いころよりずる賢くなり、幅が広がった。長丁場のリーグ戦で安定した戦いができると思います。なんといっても体力がある。

 ――新参組には六浦さんのほか鈴木さん、孫さんがいます。

 林 もともと評価が高かった鈴木さんは、精神的に強くなった。なんといっても上位の井山さんに1勝0敗、芝野さんに3勝0敗と勝ち越している。対局数が少ないとはいえ、上位陣をかき乱す存在になるのではないか。

 小林 孫くんは勝負に淡泊だったけど、才能をやっと結果につなげた。

 大西 手が早く見える印象があります。持ち時間の長い5時間をどう使うか悩ましいのではないか。

 小林 逆にベテランは手が見えるのが遅いから、時間があるほうがいい。僕が個人的に気になるのは、最年長の羽根さん。みんながAIの碁を打っているなかで、昔からのスタイルを変えない。彼だけ昭和の碁なんです。それでリーグに残留するのだからすごい。

 林 村川さんのポイントは井山さんとの対決ですね。対戦成績は3勝17敗。勝ったのは4年前にタイトルを奪った王座戦だけ。ちょっとリスペクトしすぎかな。ここで勝てば、一気に勢いに乗る気がする。

 小林 河野さんは安定感でリーグに残っている感じ。挑戦者争いに絡まないとは思わないけど、絶好調という感じはしないね。

 ――誰が挑戦者になるのか。

 小林 本命は山下さん。対抗は芝野くんでいきましょう。

 林 僕はやはり井山さんを推します。調子を落としたのは過密対局の影響でしょう。時間が解決するはずです。対抗は芝野さん、ダークホースは鈴木さん。

 大西 本命は山下先生。対抗には六浦くんを挙げたい。開幕戦の井山先生との初対局に注目しています。

 林 2月の井山さんと芝野さんも初対局なんですね。楽しみです。

 小林 レースがもつれれば、7月の芝野対山下戦が大勝負になりそう。優勝ラインは6勝2敗。8戦全勝はないでしょう。プレーオフになりそうだね。(構成・大出公二)

 ■井山さんに誰が黒星入れられるか 張栩名人(38)

 新参組は全員初のリーグ入り。どんどん若返っていますね。前期初リーグだった芝野くんはリーグ2位に入り、すごく成長した。

 トップ棋士が集まるリーグ戦は、若手棋士をすごく成長させてくれる舞台です。芝野くんと同じ10代の六浦くんがどこまでやれるか楽しみです。孫くんは22歳。ナショナルチーム時代からのかわいい後輩ですが、そろそろ結果を残したい。28歳の鈴木さんは期待された逸材。リーグ入りはちょっと遅かったけど、ここで経験値を積めば上を目指せる。

 挑戦者争いは、井山さんが中心になることは間違いない。名人失冠後、ダメージを感じさせない碁を見せている。本当にたくましい。そんな井山さんに誰が黒星を入れられるかが、一番の注目でしょう。私は井山さんが来るというつもりで準備していきます。その覚悟がなければ、とても勝てる相手ではないですから。

 ■注目対局、ライブ配信

 今期から朝日新聞デジタル(http://www.asahi.com/igo/)の有料域で月1局、注目局を対局開始の午前10時から終局までライブ配信します。午後4時からプロ棋士が解説します。今月は6日の井山対六浦戦をお送りします。

[1]井山裕太五冠(29) 感覚を戻しつつある

 12期連続12回目。前名人。「いい感覚を取り戻しつつある。長丁場の戦いになるが一局一局、精いっぱいやるだけ」。第34、35、38~40、42期名人。2016、17年の2度にわたり七冠独占を達成。18年国民栄誉賞。日本棋院関西総本部。31勝25敗(0.554)。

[2]芝野虎丸七段(19) 前期の勝ちを自信に

 2期連続2回目。前期6勝2敗。昨年、史上最年少17歳でリーグ入り。今年の日中竜星戦で中国の柯潔九段を破り優勝。「前期は思ったより勝てて自信になった。2日制のタイトル戦に出てみたい」。日本棋院東京本院。46勝21敗(0.687)。

[3]山下敬吾九段(40) 個性ある碁を見せる

 9期連続15回目。前期4勝4敗。「同世代の張栩さんが名人になり刺激を受けた。AIの影響で同じような布石が多いが、少しでも個性ある碁をお見せしたい」。第36、37期名人。棋聖5期、本因坊2期。日本棋院東京本院。36勝21敗(0.632)。

[4]河野臨(りん)九段(37) 張栩世代で盛り上げ

 8期連続8回目。前期4勝4敗。「メンバーがどんどん若返っているが、張栩さんと同世代の私たちもリーグ戦を盛り上げられるよう、挑戦者争いに加わっていきたい」。第39期名人挑戦者。天元3期。日本棋院東京本院。28勝15敗(0.651)。

[5]羽根直樹九段(42) 最年長の意地がある

 9期連続11回目。前期4勝4敗。「若い波が押し寄せているが、最年長者としての意地がある。最終戦の井山さんとの対局がヤマ場と言われるようにしたい」。第37期名人挑戦者。棋聖、本因坊各2期。日本棋院中部総本部。29勝16敗(0.644)。

[6]村川大介八段(27) AI手法と独自性で

 7期連続7回目。前期3勝5敗。「前期は前半戦で星が伸びず苦しんだが、今期は上のほうで争えるように頑張りたい。調子はまずまず。AIの手法を採り入れつつ、自分らしさを出していきたい」。王座1期。関西棋院。33勝19敗(0.635)。

[7]鈴木伸二七段(28) この機会に強くなる

 初出場。「8局も強い人と打てる。これを機会にもうちょっと強くなれれば。リーグ入りはうれしいが、すぐに落ちてしまう人も多い。少なくとも1回は残留したい」。2012年広島アルミ杯若鯉戦優勝。日本棋院東京本院。29勝11敗(0.725)。

[7]孫まこと(まこと)七段(22) 井山先生と碁、楽しみ

 初出場。「同世代の一力遼八段や本木克弥八段はすでにタイトルに挑戦している。自分はまだこれから。井山先生と持ち時間の長い碁で、どこまで通用するか楽しみです」。2017年新人王戦準優勝。日本棋院東京本院。29勝10敗(0.744)。

[7]六浦(むつうら)雄太七段(19) 挑戦者を狙っていく

 初出場。「リーグ入りしたからには挑戦を狙う。自分の力がどれだけ通じるか全くわからないが、公式戦初対局の井山先生など強い人と8局も打てるのは、本当に楽しみ」。2017年阿含・桐山杯優勝。日本棋院中部総本部。36勝16敗(0.692)。

 ※[ ]内数字は序列順位。リーグ在籍回数は名人在位期間を含む。末尾は今年の成績(勝率)=12月4日現在

 ■第44期囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦の対局予定

      12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月

(1)井山  六浦 鈴木 芝野 ―― 村川 山下  孫 河野 羽根

(2)芝野  河野 村川 井山  孫 羽根 六浦 ―― 山下 鈴木

(3)山下   孫 ―― 羽根 鈴木 六浦 井山 村川 芝野 河野

(4)河野  芝野 六浦 鈴木 村川 ――  孫 羽根 井山 山下

(5)羽根  ――  孫 山下 六浦 芝野 村川 河野 鈴木 井山

(6)村川  鈴木 芝野 六浦 河野 井山 羽根 山下 ――  孫

(7)鈴木  村川 井山 河野 山下  孫 ―― 六浦 羽根 芝野

(7)孫   山下 羽根 ―― 芝野 鈴木 河野 井山 六浦 村川

(7)六浦  井山 河野 村川 羽根 山下 芝野 鈴木  孫 ――

 ※カッコ内数字は序列順位

 ■リーグ戦規定 優勝者が名人挑戦権を獲得する。対局は持ち時間各5時間。同率1位の場合は序列上位2人によるプレーオフで挑戦者を決める。リーグ陥落は成績下位の3人。

 <訂正して、おわびします>

 ▼5日付特集面「第44期囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦 あす開幕」の記事で、井山裕太五冠の所属が「日本棋院東京本院」とあるのは「日本棋院関西総本部」の誤りでした。

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