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 予防できるはずの伝染病を止められない。発病した子どもは十分な治療もできず、今や10分に1人の割合で命を落とす。

 先月、アラビア半島南部イエメンを訪れた国連児童基金(ユニセフ)の担当者が明かした。

 4年近く内戦が続くこの国で、死者は1万人を超す。人口の半数1400万人が食糧不足に苦しみ、700万人が飢餓の瀬戸際にあるという。コレラなどの広がりも深刻だ。

 甚大な人道危機を放置していいはずがない。なにより求められるのは即時の停戦であり、内戦終結と新たな体制づくりへの道筋をつけることだ。

 和平協議が6日からスウェーデンで始まった。紛争当事者が話しあうのは2年ぶりのことだ。国際社会は、この国連の仲介努力を全力で支えるべきだ。

 イエメンでは政権と反政府武装組織フーシの対立が深まり、2015年3月に隣国サウジアラビアなどがフーシ掃討のため軍事介入して内戦に発展した。

 フーシにはイランが肩入れする。中東地域で覇権を争うサウジとイランの代理戦争の構図となり、状況は泥沼化した。

 だが最近、両国をめぐる環境が変わり、これ以上の介入を続けるのが難しくなっている。

 サウジは、カショギ記者殺害事件で一気に国際非難の的となった。もとより、イエメンへの空爆で市民を標的にしているとの批判が続いていた。対外的に強硬姿勢がとりにくい。

 イランも苦境に陥っている。米国による一方的な経済制裁が再開し、不安が高まる。フーシは先月、攻撃停止を表明し、イラン外務省も「和平協議を歓迎する」と声明を出した。

 両国は解決の道を模索する時だ。協議の場には出席しないが、決裂しないようそれぞれが影響力を行使すべきである。

 域外で鍵を握るのは米トランプ政権の動向だ。イエメン情勢を懸念する米議会の声に従い、サウジへの広範な軍事支援を見直すべきである。

 内戦による権力の空白は、イエメンでアルカイダ系テロ組織が息を吹き返す事態も生んだ。中東地域にとどまらず、世界を不安定にしかねない。

 日本は先週、国連世界食糧計画を通じてイエメンへの5億円分の援助を表明した。しかし、戦乱が続けば必要とする人の手元に支援が届く保証はない。各国と手を携え、和平実現に向けた外交努力も重ねて欲しい。

 資源のない最貧国の紛争は深刻な被害にもかかわらず見過ごされてきた。このまま「忘れられた戦争」にしてはならない。

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