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 巨大与党に支えられた安倍政権の横暴がまた繰り返された。

 自民党総裁選で3選された安倍首相が初めて臨んだ臨時国会が閉幕した。従来にもまして議論をないがしろにし、国会を下請け機関のように扱う政権の独善的な体質が際だった。

 ■熟議よりも日程優先

 先の通常国会では、森友・加計問題をはじめとする政府の不祥事に対し、国会が十分なチェック機能を果たせなかった。大島理森衆院議長が「深刻な自省と改善」を求める異例の談話を発表したが、事態は改善されるどころか、深刻さを増したとみざるを得ない。その重い責任は、首相と与党にある。

 外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法の改正は、社会のありようにかかわる大きな政策転換だ。より幅広い国民的合意が求められるにもかかわらず、政府・与党は野党の理解を得る努力を、はなから放棄していたというほかない。

 審議の土台となる外国人技能実習生にかかわる資料を出し渋り、重要事項の多くは法成立後の省令などに委ねる。質問されても「検討中」を繰り返す。

 来年4月の施行に向け、熟議よりも、48日間という短い会期内での成立にこだわった。審議を短縮するため、与党が質問時間を放棄する場面もあった。

 広範にわたる課題を抱え、政府が全体として取り組むべきテーマであるのに、首相が前面に立つことはなく、答弁はほとんど法相任せだった。

 驚いたのが、3年間で技能実習生69人が凍死、溺死(できし)、自殺などで死亡したとする政府資料に対する見解を問われた時の首相の発言だ。「初めてうかがった。私は答えようがない」。外国人労働者を人として受け入れようという当たり前の感覚が欠落しているのではないか。

 論戦の過程で明らかになった不安や課題に丁寧に向き合うことなく、成立ありきで突き進んだのは水道法改正も同じだろう。沖縄県の反対にもかかわらず、名護市辺野古の海に土砂を投入しようとしている米軍普天間飛行場の移設問題にも重なる強権的な姿勢は、断じて認めるわけにはいかない。

 ■信頼回復には程遠い

 首相は自民党総裁選で、地方の厳しい声にさらされた。しかし、政治手法に対する反省にはつながらなかったようだ。

 いまだ国民の多くが首相の説明に納得していない森友・加計問題の解明は、今国会で一向に進まなかった。論戦のテーマになることが少なかったという事情はあろうが、政治への信頼を回復するには、首相が自ら進んで説明を尽くす責務がある。

 さらに信頼を損ねる閣僚の言動も相次いだ。

 組織的な公文書改ざんの政治責任をとらずに留任した麻生太郎副総理兼財務相は、相変わらず問題発言を繰り返している。不摂生で病気になった人の医療費を負担するのは「あほらしい」という知人の言葉を紹介し、「いいことを言う」と述べたのは、健康な人も含めて医療費を分かち合う社会保険制度の基本への無理解を示すものだ。

 国税庁への口利き疑惑に加え、政治資金収支報告書を2カ月で4度も訂正した片山さつき地方創生相。サイバーセキュリティーを担当しながらパソコンを使ったことがなく、海外メディアから驚きをもって報じられた桜田義孝五輪相。

 閣僚の資質をめぐる議論に国会論戦が費やされる事態を招いた。首相の任命責任は厳しく問われねばならない。

 ■頓挫した「改憲」論議

 政策面でも、社会保障制度の立て直しや財政再建など、先送りしてきた難題に向き合う覚悟はうかがえなかった。負担と給付をめぐる議論は早々に封印、消費増税対策として、「キャッシュレス決済」を対象にしたポイント還元や「プレミアム商品券」を打ち出すなど、来夏の参院選をにらんだ野放図なバラマキばかりが目立った。

 与野党の協調をないがしろにする政権のもと、首相が意欲を示した改憲論議が進まなかったのは、自業自得だろう。

 与党は、与野党合意を前提とする慣例を破って、会長の職権で衆院憲法審査会の開催に踏み切った。立憲民主党など野党の猛反発を招き、今国会では実質的な審議は行われなかった。

 9条への自衛隊明記など、自民党のめざす「改憲4項目」を審査会で説明し、改憲の発議に向けた歯車を回す――。そんな首相シナリオは崩れた。

 改憲をめぐる世論は熟しているとは言い難く、他に優先すべき政策課題も多い。来年は統一地方選、参院選に加え、天皇の代替わりも控える。首相や自民党の思いばかりが先に立った改憲論議だが、一度立ち止まって冷静になってはどうか。

 今月末で第2次安倍政権は発足6年を迎える。長期政権のおごりや弊害に向き合わず、このまま民主主義の土台を傷つけ続けることは許されない。

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