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 米国と中国のつばぜり合いが危うくなってきた。対立の激化は、世界を二分する事態も招きかねない。両政権には、まずは緊張を深める応酬を自制するよう冷静さを求めたい。

 両国首脳は今月、貿易摩擦について来春の期限を設けて話し合う合意をした。ところが直後に中国の通信機器大手の幹部が米政府の求めにより、カナダで逮捕されたことがわかった。

 これに続き、中国ではカナダ国籍の市民が突然拘束された。関連性は不明だが、政治的思惑が皆無とは考えにくい。米中のいさかいが第三国を巻き込んだ「人質」合戦の様相に発展したのは異様であり、深刻だ。

 米中は今、先端技術をめぐる覇権争いのまっただ中にある。焦点はサイバー空間であり、行き交う情報の収集・分析力の優位を争っている。巨大な市場であるだけでなく、現代の安全保障の主戦場でもある。

 米諜報(ちょうほう)機関による監視を告発したスノーデン事件は、米国がもつ圧倒的な力を暴露した。これに対抗するように急速に中国の技術が伸びている。

 米国では、今年成立した国防権限法が特定の中国製機器を狙い撃ちにし、通信インフラ分野で政府機関や取引企業が使わないよう禁じた。米国は一部の国にも同調を求め、英国や豪州などと共に日本も応諾した。

 今後さらに米国は、先端技術にからむ製品や部品の調達ルートを中国から遠ざけるよう誘導する可能性もある。

 これに中国がどう対抗するかは不透明であるうえ、そもそも密接に相互依存している国際経済のなかで、特定の技術分野から中国を締めだすことが可能かどうかも分からない。かつての冷戦のような「封じ込め」ができる時代ではない。

 問題の根源は、中国の企業と共産党支配の国家との不可分の関係である。ボルトン米大統領補佐官は先日、対中交渉が「中国の政治構造にも深い影響を与えるはずだ」と語ったが、中国は受け入れないだろう。

 米中の競合が長期化するのは避けられない。ただ本来、こうした問題は、国際ルールと多国間枠組みの中で解決を探るべきものだ。大国間の力比べの勝者に秩序形成をゆだねる前時代的な世界であってはならない。

 貿易・投資の規範の改革や、デジタルデータを抱える政府や企業の情報管理のあり方など、新たな基準づくりに国際社会が挑む必要がある。あくまで法とルールにもとづく国際秩序を築く決意こそ、米中対立の時代の要請と考えるべきだろう。

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