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 東名高速であおり運転を続けた末、4人が死傷する事故を引き起こした男の裁判員裁判で、横浜地裁は危険運転致死傷罪の成立を認めて、懲役18年の判決を言い渡した。重大な結果を招いた男の短絡的で身勝手な行動は、強い非難に値する。

 事故は昨年6月に起きた。男は夫婦と2人の子が乗る車の進路に割り込んで減速を繰り返す妨害行為をし、最後は前に回って自分の車をとめた。一家も停車を強いられ、そこに後続のトラックが追突した。

 裁判では、車をとめる行為が「危険運転」にあたるかが、大きな争点になった。17年前にこの罪が新設された当時、想定されていなかった事態だ。

 判決は、停車したことを同罪に問うのは「無理がある」とする一方で、それまでの妨害運転と密接に関連する行為であり、男の行いと4人死傷との間に因果関係があると結論づけた。

 一連の流れの中で発生した深刻な事故であることを、重く見た判断と言えるだろう。

 どんな行為をしたら罪になり罰を受けるか。あらかじめ法律で定め、恣意(しい)的な運用を防ぐのは近代国家の基本だ。だがあまりに硬直した解釈をすると、社会の実態にそぐわず、人々の正義感からも遊離してしまう。

 裁判を通じてその法律の可能性と限界を探るのが、司法の役割だ。地裁、高裁、最高裁で判断が分かれることも十分考えられる。「限界」が見えれば、それを乗り越える新たな立法も検討されてしかるべきだろう。

 大切なのは、今回のような悲劇を繰り返させないことだ。

 一歩間違えば自動車は人の命を奪う凶器になる。だがその身近さゆえに、危険に見合う規制は後手に回りがちだ。

 飲酒運転のトラックが乗用車に追突し幼い姉妹が死亡した事故(99年、東名高速)や、同じく酒が原因で3人の子が命を落とした事故(06年、福岡市)などをきっかけに、悪質運転に向けられる社会のまなざしは厳しくなり、法整備も進んだ。

 あおり運転も被害経験をもつ人は少なくなかったが、今回の事故を受けて対策の必要性が広く共有されるようになった。

 警察庁は1月、「車間距離不保持」での積極的な摘発を全国の警察に指示した。取り締まりとともに、運転免許の取得や更新の機会をとらえた研修・啓発の強化も求められる。自衛のためドライブレコーダーを装着する人も増えているという。

 車社会に潜む危険に目を凝らし、早め早めに手を打つことで被害者を一人でも減らしたい。

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