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 英国の民意は今、どこにあるのか。再度確認する努力が求められているのではないか。

 欧州連合(EU)からの離脱が来年3月末に迫っている。世界が注視するなか、英国は今も「別れ方」を決められない。

 最近の世論調査では、「残留」が「離脱」を上回っている。国民投票で離脱を選んでから2年あまり、英国民はいまだに何が正しい道か決めあぐねているように見える。

 残留を望むのは、EU創設や通貨ユーロなどを定めた92年調印のマーストリヒト条約後に生まれた若者が多い。EUの拡大とともに育ち、「欧州人」の意識が強い。離脱すれば、その後を長く生きる世代でもある。

 逆に高齢層には、大英帝国時代を懐かしむように「EU属国からの脱却」や「主権回復」を求める傾向が目立つという。

 社会の分断が政治に反映されるのは仕方ないにしても、国の進路を決める責任は重い。なのに、この1週間の英政界の混乱は極まった感がある。

 メイ首相がEUと合意した離脱協定案は、下院で与野党ともに反発が強い。承認の採決は見送られ、首相は議場とEU首脳との間で右往左往した。

 与党の強硬派はただ離脱を叫び、野党側には政権交代への思惑が透けてみえる。どちらも穏当な妥協案を示すこともなく、無責任のそしりを免れない。

 このままでは、「秩序なき離脱」が近づくだけだ。メイ首相は来月にかけていよいよ議会の合意づくりの手腕が求められるが、求心力は下がっている。

 英政界全体の良識が問われている局面だ。分断と迷走のなかで時間切れを迎えるのか、それとも英国と国際社会の動揺を抑える代案を見いだすのか。

 突破口が見込めないなら、離脱時期の延期を考えるべきではないか。猶予期間を得ることで、離脱がもたらす現実を冷静に見つめ、民意を探り直す作業もできるだろう。延期を英国が求めるならば、EU側も協力を惜しむべきではない。

 2年前の国民投票で示された民意は重い。だが当時誇張された「明るい未来」が実像ではなかった以上、立ち止まることは党派を超えて国民も受け入れるのではないか。

 英国は43年前にもEUの前身からの離脱を問う国民投票をし、残留を決めた。当時、残留を唱えたウィルソン首相の持論は、「政治の世界では、1週間でも十分長い時間だ」。

 残された時間は少なくとも、英政界が分断を越えて賢明な道を選ぶ時間はあるはずだ。

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