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 気候変動などの影響で、日本はこれまでの常識を超えた自然災害の時代を迎えつつあるようだ。人々の命や財産を守るために、限られた政策資源をどう使うのか。対策を進めるうえでは、緊急性や費用対効果を精査しなければならない。

 今年、台風や豪雨、地震による大きな被害が相次いだのを受け、政府は今年度から3カ年の緊急対策をまとめた。公共インフラの整備が中心で、防災用の堤防やダムのほか、道路、空港、電力・通信設備など広範囲に及ぶ。投じる国費は3兆円を超え、自治体の負担なども含む総事業費は7兆円にのぼる。

 これに先立ち、政府がインフラを総点検したところ、さまざまな弱点が見つかった。高さや強度が足りない堤防、土砂崩れの危険性が高い幹線道路、停電対策が不十分な空港や災害拠点病院……。多くの人命にかかわる恐れのある施設については、特に対応を急がねばならない。

 ただし、国の財政がきわめて厳しい現実から目を背けることはできない。予算や人手を有効に使うには、想定される災害の発生頻度や被害の程度、人口の動向などをもとに、事業の優先順位を見極める必要がある。

 気がかりなのは、災害対策が来年の消費増税に伴う景気対策に組み込まれている点だ。規模ありきで事業を積み上げるやり方になれば、必要性のチェックが甘くなる懸念が大きい。

 政府は財源を主に国債発行でまかなう姿勢だ。だが、安易に借金に頼るのではなく、まず既存の公共事業などを見直し、必要性の低いものを削るなど、財源捻出の努力を尽くすべきだ。

 安倍政権は「国土強靱(きょうじん)化」を旗印として掲げるが、施設を強化するハード面の対策には限界がある。関係者の意識や行動に働きかけ、減災につなげるソフト面の対策が重要だ。

 たとえば避難や被災者支援の体制を強化する、被害やライフラインに関する情報の発信・共有をネットを使って工夫するなど、官民を挙げてやるべきことは多い。政府は現場の取り組みを後押しするべきだ。

 長い目で見れば、危険度が特に高い場所には、なるべく住まない、という発想も大切になる。個人の権利がからむ難しい問題だが、移転を促す誘導策や土地利用の規制強化の議論も、避けて通れないだろう。

 各地でさまざまな災害リスクを正しく評価し、当事者に示すことが、議論の出発点となる。どんな対応が望ましいのか、行政と住民が丁寧に対話し、知恵を出し合いたい。

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