[PR]

 職場でのパワーハラスメント(パワハラ)について、事業主に防止措置を義務付ける法整備を求める報告書を、厚生労働省の審議会がまとめた。同省は来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。

 セクハラや、妊娠・出産した女性へのマタニティーハラスメントは、男女雇用機会均等法で企業に防止措置を義務付けている。だが、パワハラは自主的な取り組みに委ねられてきた。今回、法制化に踏み出すことは前進だ。職場からパワハラをなくす一歩としたい。

 パワハラは人の尊厳を傷つける許されぬ行為だ。職場環境を悪くするだけではない。被害者の休職や退職、自殺といった深刻な事態を招くこともある。

 昨年度、全国の労働局に寄せられた労働相談では、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」が7万2千件を超えた。これによる精神障害の労災認定も増える傾向にある。対策は急務だ。

 法制化により、企業には相談窓口の設置や処分を含む社内の規定の整備などが求められる。取り組まない企業には厚労省が行政指導で改善を求めることができるようになり、悪質な場合は企業名が公表される。

 大切なのは、これらの取り組みの実効性を高めることだ。そのためには、どんな行為がパワハラにあたるのか、認識を共有することが欠かせない。

 報告書では、パワハラを(1)優越的な関係に基づき(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で(3)身体的・精神的苦痛を与えること、と定義する。

 企業側には、業務上必要な指導との線引きが難しいとの声が根強い。このため、厚労省は今後、「業務上必要かつ相当な範囲」の考え方や、パワハラに該当する典型例などを指針で示すという。具体的でわかりやすい指針作りが求められる。

 大企業ではすでに相談窓口の設置などを進めているところもあるが、中小企業の中には専門知識やノウハウが乏しく対応が難しいという声も少なくない。セミナーを開いたり企業からの相談に乗ったりするなど、政府も支援する必要がある。

 労働側からは、パワハラの行為そのものを、法律で禁止するよう求める声もあった。しかし違法となる行為の要件の明確化など課題が多いとして見送られた。防止措置義務化の効果を見たうえで、改めて検討すべきだろう。

 法整備がゴールではない。パワハラは絶対に許されないという認識を、社会に根付かせていかねばならない。

こんなニュースも