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 最大1・98倍の一票の格差があった昨秋の衆院選について、最高裁大法廷は「法の下の平等を定めた憲法に違反するとはいえない」と判断した。

 この間の国会の格差是正の取り組みに合格点を与えた形だ。だがその理由を点検すると、投票する有権者よりも、選ばれる議員・政党の利益や都合をおもんぱかった判決と言わざるを得ず、到底納得できない。

 09、12、14年の衆院選を、最高裁が続けて「違憲状態」と断じたのを受け、国会は16年に公職選挙法を改めた。そこで導入が決まったのが、都道府県の人口に比例して議席を配分する方式のひとつである「アダムズ方式」だ。大法廷はこれを「格差を縮小させ、その状態が安定的に持続する」と評価した。

 甘さに驚く。実際にこの方式で選挙が行われるのは、20年秋の国勢調査の結果がまとまった後だ。議員への影響を懸念した自民党の主導で先送りされたのだ。昨秋の衆院選は、経過措置として「0増6減」などの小幅な是正をしただけで実施された。なぜそれが「評価」されなければならないのか。

 しかもアダムズ方式も万全ではない。人口の多い都道府県への議席の割り当てが少なくなる欠陥をかかえている。

 15裁判官のうち4人が、多数意見とは別の見解を述べた。

 「2倍もの格差があるのに不平等でないというのは常識に反する」「まだ実施されていない法律を考慮すべきではない」「国会が投票価値の平等に向けて真摯(しんし)に行動していれば、是正は十分可能だった」――。

 こちらのほうが真っ当で、胸にすとんと落ちる。

 一票の価値が不平等では、国民主権を実現する最も重要な手段である選挙で、反映すべき民意が正確に測れない。統治機構全体の正統性もゆらぐ。

 国会はこの原点に立ち、公選法に明記されている「不断の見直し」に取り組み続ける責務がある。今回の合憲判断をお墨付きとして、格差の是正に背を向けることがあってはならない。

 実際に心配な動きがある。

 自民党は改憲項目の中に、市区町村が複数の衆院選挙区に分割されないようにする内容を滑り込ませた。一票の格差縮小のためには分割はやむを得ない措置だが、それをできなくしてしまおうという案だ。区割りの変更を嫌がる議員側の事情を優先させた党利党略そのものだ。

 司法がチェックの手を緩め、安易に流れてしまったいま、有権者はこれまで以上に監視の目を光らせなければならない。

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