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 結論も、そこに至る議論の過程も納得できない。

 政府が国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を決めた。来年7月から、日本の領海と排他的経済水域内で、商業捕鯨を再開するという。

 IWCは、鯨の保存(保護)とともに、捕鯨産業の秩序ある発展を目的としている。資源量の多寡にかかわらず捕鯨を否定する反捕鯨国の主張は、確かに条約の趣旨から逸脱している。

 だが、日本は各国間で主張の相違があっても、国際協調主義や法の支配を基本において、問題の解決にあたる姿勢をとってきたはずだ。自国の主張が通らないからといって、国際条約から脱退するという判断はこれに背く。日本の外交にマイナスの影響を与えかねない。

 漁業に限ってみても、資源の国際管理は重要性を増している。国際協調を軽視すると見られれば、今後の交渉での不利益につながる懸念もある。

 今回の決定に伴い、日本は南極海などでの調査捕鯨を期間の途中で中止する。調査捕鯨は事実上の商業捕鯨と批判され、2014年には国際司法裁判所で「科学目的とはいえない」とされて敗訴したが、捕獲頭数を減らすなどして再開していた。

 批判に耳を傾けた結果として調査捕鯨をやめ、南極海から撤退するというのであれば、対話の糸口になるだろう。だが、水産庁は「日本が商業捕鯨を再開する以上、続ける必要がなくなった」と、自国の都合を中心にした説明をしている。

 その「商業捕鯨の再開」のあり方も疑問が残る。国連海洋法条約は鯨類の保存や管理について、国際機関を通じて活動すると定めている。政府は、脱退後もオブザーバーとしてIWCに参加すればこの条件を満たすと説明するが、国際的に受け入れられるだろうか。

 今回の脱退決定にあたって政府は国民に開かれた議論を避けてきた。9月のIWC総会で、商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を限定的に解除するという日本提案が否決された後、政府は「あらゆるオプションを検討する」との説明を繰り返すだけだった。そのまま脱退を閣議決定し、翌日公表した。

 国会での突っ込んだ議論はなく、審議会などのプロセスも経ていない。現段階でも、商業捕鯨再開後の捕獲頭数は「IWCで採択された方式により算定する」とするだけで、具体像が示されていない状況だ。

 様々な論点が残るにもかかわらず、なぜ性急に脱退に突き進んだのか。説明が求められる。

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