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 2012年末に始まった第2次安倍政権が7年目に入った。

 まれにみる長期政権である。首相としての通算在任期間は、今年11月まで務めれば、戦前の桂太郎を上回り、憲政史上最長となる。

 だが、首相が安定した政治基盤を生かして、この国と社会の将来にとって避けられない難題に正面から取り組んできたとは、残念ながらいえない。

 少子高齢化が急速に進むなか、社会保障制度の維持に必要な給付と負担の議論には、いっこうに手をつけない。財政の借金体質は改まらず、新年度末の国債残高は897兆円に膨らむ。一方、政治への信頼を地に落とした森友・加計学園の問題は、たなざらしである。

 強引な政権運営を反省し、持てる力を暮らしにかかわる課題に集中できるか――。春に統一地方選、夏に参院選がある今年は、政治のありようが問われる大事な「選挙の年」となる。

 ■消えぬ同日選の観測

 安倍自民党は国政選挙で5連勝中だ。だが、内閣支持率は漸減傾向にあり、いまの首相に一時ほどの勢いはみられない。

 今年の参院選で改選されるのは、6年前の13年当選組。31の1人区で29勝するなど、自民党が圧勝した。その再現は容易ではない。議席減をどこまで食い止められるか、首相にとっては守りの選挙となろう。

 12年に1度、統一選と参院選が重なる「亥年(いどし)選挙」でもある。自民党の地方組織が統一選で疲弊し、参院選は苦戦を強いられるとされる。

 安倍政権が新年度予算案でバラマキを強め、外交の舞台づくりに余念がないのも、選挙情勢の厳しさを見越しての世論対策に違いあるまい。

 首相はきのうの年頭会見で、参院選に合わせた衆院の解散は「頭の片隅にもない」と否定した。しかし、政界には、首相が消費増税の3度目の先送りや日ロ平和条約交渉の成果を争点に、衆参同日選に踏み切るのではという観測が消えない。

 現在の衆院議員の任期は、今年夏の時点で、まだ2年に満たない。首相はこれまで、与党に有利なタイミングを狙った政略優先の衆院解散を繰り返してきたが、解散権の私物化は決して許されない。

 ■野党は受け皿つくれ

 首相は昨年秋の自民党総裁選で3選された。しかし、これは自民党所属の国会議員と党員・党友による「身内」の信任だ。参院選では、広く国民から審判を受けることになる。

 ただ、安倍政権に代わる受け皿がなければ、有権者は選びようがない。「1強多弱」といわれる野党がバラバラのままでは、政権与党を利するだけだ。連携を強化し、政権とは別の選択肢を示せるか、野党の真価が問われる。

 まずは今月下旬から始まる通常国会である。国会空洞化が叫ばれるなか、行政府に対するチェック機能を取り戻さなければいけない。与党が安倍官邸に従うだけなら、その役割は野党が力を合わせて果たすしかない。

 予算審議に加え、戦後日本の防衛政策を大きく転換させる新防衛大綱についても、徹底した議論が必要だ。不祥事や疑惑への追及も緩めてはいけない。参院選に向け、争点の明確化につながるはずだ。

 並行して、選挙区での候補者調整を急がねばならない。1人区は与党と一対一の対決に持ち込む。複数区でも共倒れを避けるために知恵を絞る。

 その際、衆参ともに野党第1党となった立憲民主党の役割は極めて重い。各党の違いは尊重しながら、大局を見据え、結集軸を示す責任がある。

 ■ガードレールの機能

 民主主義は、憲法が定める諸制度があるからといって、それだけで守られるものではない――。昨年秋、翻訳出版された『民主主義の死に方』の中で、米ハーバード大の2人の政治学者が警鐘を鳴らしている。

 競い合う政党が、互いをライバルとして受け入れる「寛容」。政治家が権力を行使する際に節度をわきまえる「自制」。

 法令には書かれていない、こうした政治規範こそが、民主主義を支えてきたとして、それを「柔らかいガードレール」と表現した。

 2人の考察は、トランプ政権下で党派対立が激化する米国の政治状況を踏まえたものだが、「安倍政権の日本」にも当てはまる部分が少なくない。

 熟議を放棄した法案の採決強行。国会と国民を欺く公文書改ざん。政治責任の軽視。民意を無視した沖縄・辺野古の海への土砂投入……。安倍政権の歩みは、まさにこの「柔らかいガードレール」を傷つけ、壊していないか。

 民主主義が少しずつ浸食され、気づいたときには手遅れ。そんなことにならないよう、視野を広げ、歴史の教訓に学びたい。有権者一人ひとりの選択もまた問われる年である。

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