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 脱炭素時代をめざす世界の動きが加速している。

 二酸化炭素(CO2)をたくさん出す石炭や石油など化石燃料への投資から、金融機関が撤退する。業務で使う電気を太陽光や風力などの再生可能エネルギーでまかなおうとする企業が増える。ガソリン車から電動車への転換を促す規制策を、英仏や中国が打ち出す――。

 地球温暖化対策の次期枠組み「パリ協定」が採択されてからわずか3年余りで、産業や暮らしががらりと変わりつつある。

 この大転換期を、日本はどう乗り切っていくのか。真剣に考えねばならない。

 ■時代に逆行する国

 社会や経済の脱炭素化を、もっと急ぐ必要がある。そのことを世界に思い知らせたのは、昨年秋、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が出した特別報告書である。産業革命以降の気温上昇を1・5度未満に抑えないと、異常気象や自然災害の被害がより深刻になるというのだ。

 現状では、各国がパリ協定にもとづく削減目標を達成できても、今世紀末の気温上昇は3度に達してしまう。「1・5度未満」を実現するには、目標を大幅に引き上げるしかない。

 「我々は窮地に立っている。対策を上回る勢いで気候変動が進んでおり、手遅れになる前に早く追いつかないといけない」

 グテーレス国連事務総長は先月、目標引き上げの機運を高めるよう国際社会に訴えた。

 日本の役割は大きい。

 安倍首相は6月に大阪であるG20サミットの議長として、取り組みの強化を各国に働きかける重責を担う。パリ協定脱退を表明したトランプ米大統領の説得にも努めねばならない。

 ただ、日本がリーダーシップを発揮できるのかは疑わしい。いまだに石炭火力発電を推進する国として、国際社会の風当たりが強まっているからだ。

 ■長期戦略で決意示せ

 「1・5度未満」をめざすのであれば、温室効果ガスの排出を50年に実質ゼロにする必要がある。なのに日本には30基を超す石炭火力の新規計画があり、東南アジアへの輸出もはかっている。天然ガス火力の2倍も温室効果ガスを排出する石炭火力に、なぜこだわるのか。「時代に逆行する国」と見られても仕方あるまい。

 海外では脱石炭の動きが広がっている。欧州を中心に多くの国が30年までに石炭火力を全廃することを表明した。米国でもかつては石炭火力が発電量の半分以上だったが、いまは競争力が低下して3分の1以下だ。

 対照的に、再エネは急速に拡大している。再エネの国際組織REN21によると、世界の再エネ発電の設備容量は一昨年までの10年間で倍増した。すでに世界の総発電量の4分の1を超えているという。

 再エネは脱炭素の切り札として、原発をも打ち負かしつつある。再エネのコストが下がっているのに対し、原発は安全対策でコストが膨らんでいるのだ。

 脱炭素化で世界をリードする国々では、政府が高い目標を掲げて社会や経済の変革を促している。国のめざす方向がはっきりするため、民間は思い切って石炭から資金を引き揚げ、安心して再エネに投資できる。

 日本では、役所が実現可能な数字を積み上げて目標や方針を決めることが多い。既存の構造を守るこうした手法は社会や経済の安定には役立つが、時代の大転換には対応できない。

 ■「環境先進国」は幻想

 ここは、政治がリーダーシップを発揮するしかない。

 ちょうどいま、パリ協定にもとづく政府の長期戦略づくりが大詰めを迎えている。「50年に温室効果ガスを80%削減する」という温暖化対策の長期目標をどのように達成するのか。そのロードマップである。

 日本の決意を国内外に示すには、またとないチャンスだ。

 1・5度未満をめざす、発電の脱炭素化に努める、自動車を電動化する……。こうした明確な目標を示し、30年後の日本の姿を描き出すべきだ。

 安倍政権は、思い切った政治決断をしなければならない。

 公害対策や省エネで実績があるせいか、「日本は環境先進国だ」と思いがちだ。たしかに低公害車や省エネ家電などの技術で、日本が世界をリードしてきたのは間違いない。

 だが、脱炭素の文脈においては世界に遅れつつある。太陽光パネルや風力発電装置で海外メーカーに太刀打ちできていないのは、その一端である。

 「温暖化対策は経済の足かせになる」「日々の暮らしで我慢を強いられる」。こうしたマイナス思考のままでは、環境先進国ではいられない。

 高い目標をめざすことで新たなビジネスが生まれ、生活もより便利で豊かになる。そんな発想の転換が必要だ。

 この国の未来のため、社会全体の覚悟が問われている。

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