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 「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」

 安倍首相がこう語ったのは2017年の憲法記念日のことだ。首相は先日のNHK番組で「気持ちは全く変わりがありません」と述べ、憲法改正への意欲を改めて示した。

 一方で、首相は「スケジュールありきでない」とも付け加えた。ならば、その言葉通り、期限を切って議論を進めようという姿勢は、もうやめるべきだ。

 17年10月の衆院選で自民、公明両党が3分の2超の議席を維持すると、自民は9条への自衛隊明記など改憲4項目の具体化を急いだ。ところが昨年3月に財務省の公文書改ざんなどが明らかになると内閣支持率は低下。党内では「改憲どころではない」との空気が強まった。

 首相は9月の党総裁選で3選を果たすと、国会での議論にてこ入れをしようと、下村博文氏ら自身に近い議員を憲法に関係する党や国会の要職に起用した。しかし、下村氏が「憲法議論をしないのは国会議員の職場放棄」と言い放ったことに、野党が反発。結局、昨年は年間を通じて衆院憲法審では実質審議は行われなかった。

 その直接の原因は与野党の対立にあったとしても、首相をはじめ自民の「改憲ありき」の前のめりな構えに、国民の支持や理解が広がらなかったことが大きいのではないか。

 首相は自衛隊明記にこだわるが、理由として強調するのは「自衛隊員の誇り」という情緒論だ。9条が改正されても自衛隊の役割は何も変わらないというなら、何のための改正なのか。朝日新聞が昨年の憲法記念日に合わせて行った世論調査で、53%がこの案に反対と答えたのも無理はない。

 仮に多くの国民が改正の必要性を感じていたら、野党も議論に応じないわけにはいかなかっただろう。

 昨年の憲法をめぐる動きを振り返ると、憲法に縛られる側の権力者が自ら改憲の旗を振るという「上からの改憲」が、いかに無理筋であるかを証明したといえよう。

 昨年は、憲法改正の国民投票を実施する際のテレビCMについて、法で規制すべきかどうかに改めて焦点があたった。自主規制が期待された日本民間放送連盟が、規制は困難と表明したからだ。

 野党はCMを出す資金力の差が投票の行方を左右しかねないとして規制を求めている。自由闊達(かったつ)な議論と運動の公平性をどう調和させるか。多角的な視点から検討が必要な課題だ。

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