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 政府はゆうちょ銀行の貯金限度額を倍増する方針を決めた。これまでは通常貯金と定期性貯金合わせて1300万円だったが、それぞれ1300万円、計2600万円にする。

 昨年末の郵政民営化委員会では、これまでの限度額では、年金や給与振り込みのたびに限度額を超えたり、退職金などまとまった資金を利子のつく口座に受け入れられなかったりする点で利用者に不便だとされた。限度超過についての説明や通知が郵便局の負担になっていることも理由に挙げられた。

 確かに利用者や郵便局には利点があるだろう。だが、引き上げには疑問が多い。

 ゆうちょの業務に制約を課しているのは、国の後ろ盾のある金融機関の力が増せば、地方銀行などの顧客を奪い、民業を圧迫する懸念があるからだ。

 日本郵政とその傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険は2015年秋に株式を上場した。しかし、日本郵政の株式の過半は今も国が握り、ゆうちょ銀株式の89%は日本郵政が保有する。

 郵政民営化法では、ゆうちょ銀、かんぽ生命の株式は「できる限り早期に処分する」とされている。だが、日本郵政は豪州の物流会社への投資に失敗。ゆうちょ、かんぽ頼みの経営から脱却するメドが立たず、株式売却の先行きは不透明だ。

 銀行業界は「ゆうちょ銀の完全民営化に向けた具体的な道筋は何ら示されておらず、民間との公正な競争条件が確保されていない」として、限度額引き上げを批判している。

 地銀や信用金庫などの地域金融機関は、地方経済の衰退や低金利の継続で、経営環境が悪化しつつある。政府は、独占禁止法適用のあり方の見直しなどまで含めて、地銀の生き残り策を検討している。その一方で、ゆうちょ銀の規模拡大を認めるのは、あまりにちぐはぐだ。

 そもそもゆうちょ銀は、メガバンクに並ぶ巨額の資金を集めながら、十分運用できていない。民営化委も、適切な運用先が少なくなり、マイナス金利も含めた日銀預け金が増加していると指摘し、「その適正化が大きな課題」と述べている。

 民営化委は、限度額引き上げに際して、職員に貯金獲得を促すような評価手法を撤廃することを要求した。これ以上の見直しは、日本郵政のビジネスモデルの再構築と、ゆうちょ銀株の保有比率を3分の2未満にすることを条件にしている。いずれも厳格に守る必要がある。

 民営化をどう進展させるのか。点検が不可欠だ。

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