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 賃金や労働時間の動向の指標となる毎月勤労統計の調査が、長年にわたって決められた方法通りに行われず、データに誤りがあることがわかった。統計法に基づく政府の基幹統計での信じがたい不正で、行政に対する信頼を揺るがす行為だ。

 なぜこんなことが起きたのか。過去のデータにどれだけの誤りがあり、その影響はどこまで及ぶのか。徹底的に調べて速やかに公表するべきだ。

 毎月勤労統計は従業員5人以上の事業所が対象で、500人未満は抽出、500人以上はすべての事業所を調べることになっている。全数調査の対象は全国に5千以上あるが、その約3割を占める東京都で、厚生労働省が抽出した約500事業所しか調査していなかった。

 このルール違反は04年から続いていたという。何らかの事情があったのかもしれないが、ならば調査方法を変更し、対外的に明らかにするのが筋である。自分たちの都合で、勝手にルールを破ることなど許されないのは言うまでもない。

 都内の規模の大きな事業所は比較的賃金が高い傾向にある。こうした事業所が一部しか集計に加えられなかったために、賃金のデータは正しく調査した場合より低くなっていたとみられている。

 このデータは、雇用保険や労災保険の給付金の上限などを決めるのにも使われる。調査方法を勝手に変えたことで、本来の給付額より少なくなった人が多数いるという。全容の解明と被害の救済を急がねばならない。

 看過できないのは、厚労省が昨年1月から、東京都の大規模事業所のデータについて、全数調査の結果に近づけるような統計処理を行っていたことだ。

 その時点で、調査方法がルールと異なっており、データに問題があるということに、当然気付いていたはずだ。なのに事実を速やかに公表しなかったことは、組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)と言われても仕方ない。

 昨年12月20日には厚労相にも報告があがったが、翌21日にはそのことを伏せたまま、従来通りに問題のある統計を公表している。あまりに不誠実で、事態の深刻さを理解していない。

 昨年の通常国会で厚労省の労働実態調査のずさんさが明らかになり、裁量労働制に関わる法改正が撤回になったことは記憶に新しい。

 政府の様々な統計は、政策立案の根拠になるものだ。その大事な統計を扱う自覚と緊張感があまりに欠けている。猛省を求めたい。

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