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 日産自動車のゴーン前会長が会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反の罪で起訴された。全面的に争う構えを見せており、裁判の行方は見通せない。だが、日々営業を続ける大企業として、日産は企業統治を早急に立て直さねばならない。

 日産は昨年11月に代表取締役だったゴーン前会長を会長職から解任し、代表権も外した。逮捕に先立つ数カ月間の内部調査の結果、重大な不正が明らかになったためという。ただ、日産は不正行為の詳細については明らかにしていない。

 東京地検の捜査や、今後の公判との兼ね合いから、公表に限界があるのは理解できる。だが、20年にわたって日産に君臨し、仏ルノーとの関係の要でもあった前会長が突然、経営の舞台から退く事態である。出直しを図るためには、問題の本質と責任の所在を解明することが不可欠だ。

 客観性のある調査をし、その内容を可能な限り公表することが、多くの利用者、従業員、取引先を有する上場企業としての責務だろう。金商法違反では法人としての日産も起訴されており、説明責任は重い。

 日産は社外の法律家らによる特別委員会を設けた。3月末をメドにまず取締役報酬の決定過程の改善について提言を受けるというが、企業統治全体について掘り下げた調査を急ぐ必要がある。刑事責任を問われるのは前会長らだけだとしても、他の役員らが十分に義務を果たしていたのか見極めなければ、新たな経営体制は組めないはずだ。

 ルノーとの間では、前会長の評価や臨時株主総会の開催をめぐって確執があるとされる。かつて救済された立場ではあるが、少数株主や従業員らの利益も踏まえ、どのような関係が両者にプラスなのかを整理し、建設的な議論をするべきだ。

 事件は日本の刑事司法が抱える課題も浮かび上がらせた。

 海外メディアは、勾留期間の長さや、取り調べに弁護人が立ち会えないことを批判的に伝えた。一部に誤解もあるが、身柄拘束を続けて自白を迫る手法を捜査当局が使ってきたのは事実だ。人質司法と呼ばれ、国内でもかねて問題視されてきた。

 検察は今回、証拠を集めやすくする司法取引を活用しながら逮捕・勾留を繰り返した。裁判所が延長請求を1度退けたものの、市民の間にも「現状でいいのか」との疑問が広がった。

 司法全体への信頼を揺るがしかねない事態であることを法曹界・学界は認識し、改善に向けた議論を始める必要がある。

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