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 組織の不正を内部から告発しやすくして、是正に結びつけるには、いまの制度をどう手直しすればいいのか――。

 そんな問題意識のもと、公益通報者保護法の改正作業を進めてきた内閣府・消費者委員会の専門調査会が、昨年末に最終報告書をまとめた。

 06年施行の同法をめぐっては、適用の要件が厳しく、通報者の保護が十分ではないため、期待される役割を果たしていないとの指摘が根強い。

 こうした声を受け、報告書には「従業員300人超の企業に制度の整備を義務づける」「保護の対象を、現役の労働者だけでなく役員や退職者にも広げる」などが明記された。

 その方向に異論はない。だが安心して通報できる仕組みにはなお遠いと言わざるをえない。経済界の反発で骨抜きになった点がいくつもあるからだ。

 たとえば、通報を受けつける担当者の守秘義務だ。勇気を奮って告発した人の名前などが、不正の当事者や周辺に漏れる例はいくつも報告されている。

 担当者に罰則つきで義務を課すべきだとの意見もあった。だが報告書は、組織内での保秘態勢づくりを求めるという、あいまいな提案にとどまった。

 人事などで通報者に不利益な扱いをした場合、企業側に科す「制裁」も及び腰の感が否めない。行政機関による助言、指導、勧告、企業名の公表の各措置を設ける考えが示された。

 前進ではあるが、これで歯止めになるだろうか。より直接的な効果のある「是正命令」の導入も検討するべきだろう。

 通報者の特定と報復は、告発をためらわせる大きな要因だ。メディアなど外部機関に通報した場合も保護が広く及ぶようにすれば、緊張感が増し、企業も不適切な対応をしにくくなるはずだ。かねて言われてきたことだが、この論点についても評価できる改善はなかった。

 気がかりなのは経済界の過度に後ろ向きな姿勢だ。今後、政府内で改正法案づくりが始まるが、この報告書でも踏み込みすぎだとして、さらなる押し戻しを図って働きかけるのではないか、との見方がある。

 制度の意義を改めて思い起こしたい。組織内部の良心の告発を促し、消費者や世の中全体の利益を守るのが公益通報だ。それは結果として、その企業自身の健全な発展につながる。

 不正会計や品質のごまかしなど、不祥事はいまも相次いでいる。視野を広げ、大局的見地から制度の充実を図ることこそ、社会の要請である。

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