[PR]

 英国が欧州の国々の連合体から離脱するのは、3月29日と決まっている。それまであと10週間しかないというのに、いまも離脱条件が定まらない。

 1年半をかけた末に英政府と欧州連合(EU)がまとめた協定案が英国議会で採決にかけられ、否決された。それも、歴史的な大差だった。

 「英国はどうしたいのか、早急に明示してほしい。もう、ほとんど時間がない」

 直後にEU幹部が漏らした言葉がすべてを物語る。はっきりしたのは、いまの協定案を英国の国民も議員もおしなべて受け入れないという現実だ。

 メイ首相は21日までに代替案を示すというが、数日で劇的な変化を遂げるとは思えない。世界経済にも影響を及ぼしかねない時間切れの「合意なき離脱」が、現実味を帯びてきたとの悲観論も強まっている。

 解決策が当面見えなくとも、無秩序な離脱は避けねばならない。そのために英政府はまず、EUに対し離脱時期の延期を申し入れるべきではないか。

 EU内には延期に理解を示す声も出ている。加盟27カ国すべての同意が必要だが、混乱回避のために猶予を設けることに協力を惜しむべきではない。

 それがたとえ数カ月であれ、英政界は全力で収拾策を講じねばならない。EU幹部の嘆きはもっともであり、最大の問題は英国内の混迷にこそある。

 議会は強硬離脱派と穏健離脱派、残留派に3分されている。その中で最大野党・労働党は解散総選挙をねらい、与党保守党は首相に多くの不満を抱えつつも政権維持を優先する。

 英国はいま、歴史的な岐路に立つ重責を知るべきだ。首相と議会は党派の利害を超えて進路を決すべき局面である。

 2016年の国民投票では、52対48の比率で離脱が残留を上回った。その民意を尊重するのは当然ではあるが、この間のEUとの交渉で唯一編み出せた離脱条件が現在の協定案であり、抜本的な修正は望めない。

 英国領・北アイルランドの問題などが物語るのは、苦難の末に外した国境の垣根をもとに戻すことがいかに困難かだ。離脱を選ぼうにも、具体的な道筋を描けないのならば、立ち止まって再考するしかあるまい。

 英国は離脱の延期を検討するとともに、議会の解散総選挙か、あるいは国民投票の再実施という選択肢が考えられる。2年半前には想定していなかった現実に国民は直面している。その新たな環境に適応する冷静な政治判断が迫られている。

こんなニュースも