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 大きな転機の年――。NHKの上田良一会長は年頭記者会見で、今年をそう位置づけた。

 かねて望んできた、放送中の番組をインターネットでも常時同時配信できるめどが立ち、放送法改正案が通常国会に提出される見通しになったのを受けた発言だ。昨年末には4K・8Kの本放送も始まった。

 だからこそ、NHKは山積する課題に真摯(しんし)に向き合い、「公共」の使命を果たすために何をすべきか、議論を深め、決意と覚悟を組織全体で共有しなければならない。

 先ごろ発表された19年度予算案は9年ぶりの赤字予算となった。秋以降、順次実施する受信料の還元や値下げを反映したもので、赤字分の30億円はこれまでの繰越金で埋めるという。

 その額は1千億円にまで積み上がっているというから驚く。受信料水準については、総務省の有識者会議が「継続的な見直し」を求めている。今回の地上波・衛星波あわせて実質月額160円程度の値下げは当然で、さらなる検討が迫られよう。

 そのためにも、業務やガバナンスの改革は必須だ。

 4K・8Kでテレビチャンネルが六つに増えたのを受け、NHKも「衛星波を整理・削減する方向で年末をめどに考え方を示す」と表明している。また、常時同時配信が始まってNHKの影響力がさらに強まれば、民放との格差が広がり、多様な情報を発信してきた二元体制が揺らぎかねない。ネット事業に充てる経費に上限を設けるなどして、なし崩し的な業務拡大に歯止めをかける必要がある。

 報道機関として政権との距離をいかに適切に保つかという、長年の課題も残されたままだ。

 昨年出版されたNHKの元記者の手記が反響を呼んでいる。

 森友問題の特ダネを報じた現場に、局幹部の不満が伝えられたり、予定していた放送がされなかったりしたという。NHKは「虚偽の記述がある」と反論するが、それ以上具体的な説明はしていない。

 今月初めには、沖縄・辺野古の埋め立てをめぐり「あそこのサンゴは移している」という安倍首相の発言(事前収録)をそのまま放送し、沖縄県などから「不正確」との指摘を受けた。移植したのは区域外にあるごく一部だという事実を伝えなかったことを批判されても、「自主的な編集判断」と繰り返すばかりで、説得力を著しく欠く。

 こんな姿勢で「転機」を乗り切れるだろうか。求められるのはうわべの言葉ではなく、視聴者の理解を得る行動である。

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