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 宇宙を不毛な軍拡競争の舞台とするつもりなのか。

 トランプ米政権が、ミサイル防衛の中期的な指針となる戦略文書「ミサイル防衛見直し(MDR)」を発表した。

 2010年にオバマ前政権が策定した指針は、北朝鮮やイランの弾道ミサイルに焦点を当てていた。今回は、極超音速兵器などの開発を続けるロシア、中国に対抗するため、宇宙空間の積極利用を掲げたのが特徴だ。

 極超音速兵器は音速の5倍以上で飛び、地上のレーダーでは探知と迎撃が困難とされる。新指針ではミサイル発射を探知、追尾するセンサーを宇宙空間に配備し、やはり宇宙に配備した迎撃システムを使って、発射直後のミサイルを破壊する構想を打ち出した。

 しかし、高速のミサイルを撃ち落とすのは技術的に難しく、研究開発にどれだけ巨額の費用がかかるかわからない。広大な米本土や同盟国を守り切る確実な手段にはなりえない。

 米国では1980年代にレーガン政権が、ソ連の核ミサイルに対抗するため「スターウォーズ計画」と呼ばれた戦略防衛構想(SDI)を発表したが、冷戦終結で立ち消えとなった。

 その時のように、ロシアや中国に軍事的に過重な負担を強いて屈服させるのが狙いだとすれば、相互依存が格段に深まった冷戦後の国際環境を見誤っているというほかない。

 気がかりなのは、日本を「米国の最も強力なミサイル防衛のパートナー」と位置づけ、トランプ大統領が同盟国としての負担を求めていることだ。

 日本はすでに米国製の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の導入を決めている。1基あたり1224億円を投じ、収集したデータは米本土防衛にも活用されるだろう。新方針によって、さらなる負担増や役割拡大を求められる可能性がある。

 トランプ政権は昨秋、ロシアによる巡航ミサイルの開発・配備を理由に、中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を表明した。この条約に縛られない中国への不信もあるが、軍備管理や信頼醸成に背を向け、力には力で対抗するという姿勢は地域の緊張を高めかねない。

 中国、ロシアが軍拡を進め、宇宙の平和利用に逆行する動きを強めているのが確かだとしても、東アジアで日米と中ロが対峙(たいじ)するような構図となれば、誰の利益にもならない。

 日本はトランプ氏と一線を画し、宇宙の軍拡に歯止めをかける役割を果たすべきだ。

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